『スノープリンス』を試写で観る。「禁じられた恋のメロディ」の副題がついているが、「禁じられた遊び」や「小さな恋のメロディ」より、チラシの見出しにあるように「日本版『フランダースの犬』」が言い得ている。『ぼくとママの黄色い自転車』を「日本版『母をたずねて三千里』だね」と言われると、他の言い換えを思いつかなくなったが、この作品は、まさに『フランダースの犬』。観ていて何度もアニメの切なさがだぶった。
初々しく微笑ましい主役の二人は、学校にも通えない貧しい少年・草太役にジャニーズJr.の森本慎太郎、ピアノが得意なお嬢様の早代役に桑島真里乃(ちりとてちんでヒロイン喜代美の少女時代を演じていたのが、彼女。ますます貫地谷しほりに似ていたのが、びっくり)。身分違いの二人の間に立ちはだかる壁は『ロミオとジュリエット』を、早代の同級生の男の子たちも加わった冒険は『スタンド・バイ・ミー』を思わせる。
『バタアシ金魚』『東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜』『歓喜の歌』などを手がける松岡錠司監督作品。脚本は『おくりびと』の小山薫堂さんのオリジナル。プレスシートによると、「ピュアな少年の物語、清貧というテーマで描きたい」という想いから企画が始まったという。『おくりびと』では石文(いしぶみ)が印象的に使われていたが、この作品に登場する「夜空色の絵の具」もファンタジー感があって、わたし好み。村に現れ、次の村へと去って行くサーカスの非日常感も好き。小山さんは相当ロマンティストな人なのかもしれない。
ドビュッシーの「月の光」が全編を彩り、さらに草太が描く絵にも月の光が射し込む。主役の平均年齢はかなり若いのだけど、二人を支えるべく香川照之、浅野忠信、中村嘉葎雄、岸恵子ら豪華実力派が顔をそろえ、しっとり大人っぽい作品に。「つばさ」で葛城清之助を演じた山本學さんは銀幕でも渋い。短い場面ながら確かな存在感を残していた。
12月12日(土)より全国ロードショー。
2008年10月13日(月) 鎌倉山の陶芸教室と『静辰』
2002年10月13日(日) 新宿のドトールにいませんでした?