保育園の役員会の活動で、「父母連」の総会を傍聴する。父母連とは「文京区認可保育園父母の会連絡会」のこと。各保育園から保護者の代表が集まり、それぞれが抱えている問題を分かち合い、力を合わせて解決し、よりよい保育を目指している。ロの字型に組んだ長机を埋め尽くすお母さんに混じって、お父さんも一割ほど。意外と多い。託児もあるけれど会議までくっついて来ている子どもたちも合わせると、優に百人は超えていると思われる。
独特の熱気がみなぎる会場に既視感を覚えて、あ、女性会議だ、と思い出した。広告会社時代、広告労協という労働組合の総本山のようなところの中に女性にまつわる問題をあつかう「女性会議」なる分会があり、わたしは二年ほどその担当に就いていた。男女比といい、参加者から立ち上る空気といい、父母連と女性会議はよく似ており、懐かしさを覚えた。
都電遠足の案内、区議会議員各派とのコンタクトの報告、「園での外遊びについて」保育課からの回答の報告などなど、かけ足でてんこもりの議題をさばいていき、本日の目玉企画「区長と語ろう」の時間。新区長の成澤廣修氏は、会場向かいにある小学校の行事で正義の味方に変身するという仕事の後に駈けつけられた。
日頃から父母連は区に質問や要求をぶつける常連のようで、「お手柔らかにお願いします」と始まり、「対立と調整から、信頼と対話へ」という立ち位置を明らかにした上で、保育園の役割は「仕事と育児の両立 子育ての心理的不安の解消 子育ての経済的不安の解消」であり、「潤滑油」のように機能する「道路や水道のようにひとつのインフラ」である、「保育の質は生活の質。人間関係の質」といった考えを話された。
質疑応答では、「区長を社長とすると、保育というサービスを区政の中でどう位置づけるか。コストはかかるが住人を呼べるものにするのか、金をかけずにそこそこにするのか」と男性保護者から質問。これに対して、「入口の議論だけしていてもしょうがない。具体的な議論をしないと」と区長。要望書を送ったのに区からの返事がない、という不満に対しては、「くろやぎさんとしろやぎさん」を例えに持ち出した。若くて行動力を感じさせ、わたしが働いていた広告業界にいそうなタイプ。頭の回転が速く、受け答えもスマートだけれど、はぐらかすのもお上手な印象を受けた。文京区の子育て環境をどういう方向へ導くのか、お手並み拝見。
前の煙山力区長時代に「区長と話そう」という企画に行ってみようと思ったことがある。区長と直接話せたら、「どうして、子育てに関する文書のあて名に母親の名前が登場しないのか」を聞いてみたかった。子どもの名前のみ、父親との連名はあっても、母親の名前はいつもなく、責任だけは母親に押しつけるくせに、と腑に落ちない思いをしていた。結局、その企画は逃してしまったのだが、新区長と居合わせた今日は、皆さんの質問の緊張感を損ないそうで、「母親の名前がないのは淋しい」と直訴するのはまたの機会となった。
2005年09月09日(金) アンティークボタンの指輪