2007年02月01日(木)  マタニティオレンジ69 女性は子どもを産むキカイ?

厚生労働大臣が口にした「女性は子どもを産む機械」という発言が問題になっている。こういう言い方は昔からあったけれど、いまや当の大臣の専売特許のようになり、多方面から非難が集中している。最初ニュース音声で「女性は子どもを産むキカイ」と聞いたとき、「機会」という漢字が頭に浮かんだ。日本語としては不自然なのだけど、「女性は子どもを産む機会」って詩的な表現だなあと思ったら、「機械」のほうだった。機械という言葉は「人間」の反対語としてとらえられることが多いし、「女性を機械呼ばわりとは!」「女性の人間性を否定している!」と猛反発を食らっている。産む前だったらわたしも反射的にそう感じたかもしれないけれど、ちょうど半年前の出産のことを思い返しながら書き留めていて、女性の体に備わっている妊娠・出産という能力は実に精巧なメカニズムだなあと思っていたところ。「女性=機械」とイコールでは結べないけれど、そういう側面はあるということを生理的に理解できる。machineというよりはvehicleに近いかなあとは思う。手元の辞書でvehicleを引くと、「媒介物、伝達の手段(方法)、表現形式」とある。

「機械」というたとえを使ったのは話をわかりやすくするため、という釈明がされている。報道では問題発言の部分ばかり抜き出されているので、どういう文脈で使われたのかつかみかねるけれど、ちょっとした温度や湿度の差を嫌う精密機器以上にそれはとてもデリケートなもので、機能させるには環境の整備やサポート体制や設備投資が必要である、という趣旨での発言かどうかは疑問だ。女性を機械にたとえたことより、「機械が減っているから、一台あたりの生産量を上げるべき」と聞こえるくだりに、わたしは引っかかりを感じる。子どもの「生産量」が減っているのは「機械」の責任ではなく、少子化は「機械」だけが頑張って解決する問題ではない。マシーンは電源を入れスイッチをONにすれば作動するけれど、大臣のたとえる「機械」は言葉ひとつでダメージを受ける繊細さを備えている。そういう意味では配慮に欠ける発言だったと言わざるをえないけれど、「機械」という言葉尻だけをとらえて騒ぎ立てても何も産み出さないと思う。この表現の何が問題なのかが議論され、問題発言が問題提起のきっかけになることが、「子どもを産む機会」を行使しやすい国へ近づく一歩にならないだろうか。そんな期待を寄せながら事の成り行きを見守っている。

2004年02月01日(日)  東海テレビ『とうちゃんはエジソン』
2002年02月01日(金)  「なつかしの20世紀」タイムスリップグリコ

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