■朝刊の番組欄の紹介記事を読んだときから見るぞと決めていたFNSドキュメンタリー大賞「とうちゃんはエジソン」。16時に目覚ましをかけておいて、見逃さなかったことを心から喜べるすばらしい番組だった。16年前、点検中の機械が突然動き出し、巻き込まれた右手の指をすべて失ってしまったとうちゃん。右手の機能を補ってくれる道具を探すが、作っているメーカーはなく、ならば自分がと補助具作りに乗り出す。試行錯誤の末、完成したのは2年後。補助具に箸を取りつけ、右手で食べたいという願いを実現した。箸をトンカチに替えれば釘を打て、シャベルに替えれば土を掘れる。失われた指を補うこの道具は、指を失ったことであきらめていた夢を叶えてくれる。噂を聞きつけて全国から補助具を必要とする人が訪ねてくる。一人ひとり不自由の形は違うから、オーダーメイド。とうちゃんは夜なべで世界でたったひとつの補助具を作り、材料費だけを受け取り、笑顔で見送る。できなかったことをできるようになったのがうれしいから、同じうれしさを他の人も味わってくれるのがうれしい。無邪気で無欲なとうちゃんを見ているだけで心が洗われた。どうやったら、とうちゃんのように無垢になれるのだろう。涙が少しは自分の醜い部分を洗い流してくれた気はする。奥さんのモノローグの形でとうちゃんのことを淡々と語る宮本信子さんのナレーションもまた良かった。年金とかあちゃんの工場勤めで暮らす夫婦の絆にも涙、涙。ラストは、補助具に引っ掛け爪のようなものをつけて逆上がりに挑戦するとうちゃん。見事くるりと回った後の笑顔がまた素晴らしく、テレビに向かって思わず拍手。こんな生き方をしている人がいるという事実、その生き方に光を当てた制作者のまなざし、驚きと感動に加えて、感謝のようなありがたい気持ちに包まれた。
2002年02月01日(金) 「なつかしの20世紀」タイムスリップグリコ