2006年10月21日(土)  5本目の映画『天使の卵』初日

5作目の脚本長編映画となる『天使の卵』が本日より全国公開。脚本を書くようになってから作品のたびに思いがけない出会いやめぐり合いをプレゼントされているけれど、『てんたま』にはスタートから運命的なものを感じた。

プレス用パンフやbuku10号のエッセイにも書いたけれど、わたしが持っているたったひとつの小説家のサイン入り本が『天使の卵』原作者・村山由佳さんが1997年に出された『翼―cry for the moon』の初版本。新聞の読者プレゼントで当選したもので、「今井雅子様」とあて名が入っていたことに感激した。村山由佳ワールドの面白さを教えてくれたこの本はわたしのお気に入りの一冊になり、ときどき思い出しては読み返しているのだが、ひさしぶりにページを開いた数日後にプロデューサーから電話があり、「村山由佳さんの原作の映画化脚本を」と仕事が舞い込んだ。

原作の村山由佳と脚本の今井雅子。その二つの名前が9年前に同じページに刻まれていた偶然。ロケ地で村山さんご本人にお会いしたときにこのことを伝えたら、「わあ本当? 面白い!」と瞳を輝かせて喜んでくださった。飾らない人柄に、ますますファンになった。

戸田恵子さんとの出会いも、うれしいサプライズだった。主人公・歩太の母である幸恵役が戸田さんに決まり、わたしがロケにお邪魔する日が幸恵の切り盛りする小料理屋『けやき』の撮影日に重なったことから、「舞台『温水夫妻』を観て以来のファンです」と直接伝えることができた。目にも声にも力のある女優さんだが、お会いしてみて、内面から発して引きつける磁力のような強さを感じた。抱いていた印象よりも小柄な体が舞台やスクリーンやテレビで大きな存在感を発揮するのは、女優魂のスケールの成せる業なのかもしれない。

学生時代を過ごした京都がロケ地に選ばれたことにも、うれしいめぐり合わせを感じた。秋の京都はことのほか人を惹きつける。冨樫森監督はいかにも京都という場所を外し、京都でありながら京都京都していない絵を追求したが、匂い立つに秋の京都の色と空気は見事に焼き付けられ、美しい映像となった。

極め付きのめぐり合わせは、命。『子ぎつねヘレン』に続いて『天使の卵』も脚本を書きながら命について考えることが多かった。そのせいか、映画が撮影に入ると、わたしの中にも天使の卵が宿っていた。命はどこからやってくるのか、天からの手紙である卵に乗って降りてくるのではないか……脚本に込めた想いは実感となった。

いよいよ今日、てんたま公開。生後2か月のたまを連れて舞台挨拶を見学するのは遠慮して、だけど初日気分を味わいたくて、銀座松屋のてんたまパネル展(31日まで)へ。2階レディースフロアの一角で宣伝素材を流し、ところどころの柱に劇中のシーン写真と台詞を納めたパネルが貼り出され、秋冬の装いに囲まれてさりげなくてんたまの世界を紹介。買い物途中のお客さんが目を留めて立ち止まり、携帯カメラで写真を撮っていく。

春妃が卵について語るシーンのパネル前で、わが家のてんたまを抱いて記念撮影。光の加減で卵を持つ春妃の手が何かを発信しているように見えた。映画とは光と影でできているものだけど、絶望の中から生まれる希望に光を当てた映画『天使の卵』は、とくに光と影のコントラストを意識して作られている。スクリーンから発せられるその光と影が、受け止めた人とどう響きあうのか、楽しみでもあり、ドキドキする。観られた方はぜひ感想を聞かせてください。撮影に使われたシナリオ決定稿と今井雅子のコメントが掲載されている劇場パンフレットもどうぞよろしく。

この日記に埋め込んであるブログパーツはてんたまサイトから持ち帰ったもの。日記の下にあるパズルのピースをマウスでつかんで完成させると、劇中で使われる歩太の描いた絵が続けて二枚現れる。おためしあれ。
(※ブログパーツは映画公開終了とともに終了しています)

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