■昨日観た映画『いぬのえいが』は、大阪の実家で飼っていた雑種のトトのことを思い出させてくれた。死に目に会わなかったせいか、トトのことを思い出しても悲しくも切なくもならない。ただひたすら笑いがこみあげる。そのせいで地下鉄でもエレベーターの中でもにやけて、きっとまわりの人には気味悪がられていると思うのだが、トトはとにかくどんくさいヤツだった。子犬の頃、自分で自分の足を踏んで、よく転んでいた。散歩に行くと、しょっちゅう視界から消えて、溝に落ちていた。家族で山登りに行ったとき、一人だけ車酔いして、いつまでもゲーゲー吐いて、背中をさすられていた。庭先で野良猫と50cmぐらいの距離で睨み合いになって、逆毛を立てられてすごすごと退散していた。妙にケチ臭くて、誰が横取りするわけでもないのに餌を土に隠していた。なのに、どこに隠したか忘れて、庭中を掘り返し、「犬のくせに、匂いわからんの?」と母に突っ込まれていた。人間と同じものを食べたがり、アイスクリームでおなかを壊した。トトもぬけてたが、牛乳パックに入れたトトのえさを間違って飲んだ父も負けてなかった。トトは家族以外の誰にもなつかず、うちに一か月ホームステイしたブラッド君が唯一の例外だった。家族の誰よりも寒がりで、石油ストーブのまん前に陣取り、白い毛に焦げ目がついてシマシマになっていた。もしも「犬の話を書いてください」という仕事が来たら、トトをモデルにした思いっきり情けない犬を書こうと思う。
2003年03月27日(木) 中国千二百公里的旅 食事編
2002年03月27日(水) 12歳からのペンフレンドと3倍周年