2004年12月07日(火)  俳優座劇場『十二人の怒れる男たち』

俳優座劇場プロデュースNo.67『十二人の怒れる男たち』を観る。レジナルド・ローズ原作、映画にもなったこの有名な作品を観るのははじめて。十二人の陪審員の審議の模様がストーリーになっているという予備知識はなんとなくあったけれど、冒頭とラストと途中(審議に必要なものを差し出すとき)に守衛(小山内一雄)が顔を出す以外は、十二人の男たちが舞台に出ずっぱりで、本当に常に誰かが「怒って」いた。陪審員の個人的なキズに触れる発言が怒りを買ったり、陪審長の仕切り方にケチがついて喧嘩になったり。白熱する議論というのは、その展開自体がスリリング。陪審員たちのやりとりから、容疑者のバックグラウンド、犯行の様子など裁判の内容が明らかにされていくのだが、最初は十一人の陪審員が「クロ」だと信じていた事実が、少しずつ揺らぎ、引っくり返り、いつの間にか有罪無罪が逆転し、最後には無罪で全員一致し、審議を終える。推理劇に心理サスペンスが加わった形だが、この面白さは十二人の個性が際立っているからこそ。名前ではなく「1号」から「12号」の数字で呼び合う陪審員たちは、記号でありながら、それぞれあだ名をつけやすそうな明快なキャラクターを持っている。スポーツマンタイプの陪審長1号(大滝寛)、うだつが上がらないけれど愛嬌がある2号(荘司肇)、喧嘩っ早い3号(三木敏彦)、理知的で一目置かれる紳士の4号(立花一男)、冷静で穏やかだがスラムでの過去を持つ5号(井上倫宏)、調子のいい職人6号(緒方愛香)、ヤンキース戦が気になる無責任な若者7号(高橋克明)、最初に「有罪と決めつけたくないから無罪」に一票を投じた8号(松橋登)、老いているがプライドを失っていない9号(浜田寅彦)、言うことが極端な10号(鵜澤秀行)、メモ魔のヨーロッパ移民11号(里村孝雄)、優柔不断な広告屋12号(須田真魚)。この日記を書いているのは鑑賞して一週間後だが、十二人の席順とともに彼らの違いを思い起こせる。皆さん熱演だった。舞台右手のほうには「審議室に備え付けられた」設定の給水器があり、出演者はかわるがわる水を飲んでいたが、先日、上杉祥三さんの舞台を見たときに「二人芝居で一時間半出ずっぱりなので、舞台上で水を飲むシーンを作った」と話していたのを思い出し、これも小道具兼水分補給の工夫なのかなと思った。■今夜の観劇のおともは最年長の友人コンビ、余語先生とT氏。三人で熱心にアンケートを書いた後、近くの居酒屋『真希』へ。「もう少し謎解きよりも人間ドラマを見たかったですね」とT氏は鋭い意見。確かに、最後までクロを主張していた3号が「シロ」に寝返るところがあっさりしていた。「ああゆう奴らは潰していくべき」と主張していた彼自身に人には言えない過去があり、けれどそこからやり直せた人間だとしたら……などと勝手にアイデア出しして盛り上がる。先日オレオレ詐欺に危うく200万円かすめ取られるところを免れたT氏、お安いものですとご馳走してくれた。

2003年12月07日(日)  どうにも止まらぬ『剣客商売』

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