乃木坂のタトゥー東京にて『ジェニファ 涙石の恋』完成披露試写。一般招待は、直前の募集にも関わらず高倍率となったそう。強運の100名とプレス、関係者を招いてのプレミア上映。『風の絨毯』プロデューサーの益田祐美子さんと待ち合わせて行くと、赤絨毯を敷いた階段を上り、2階の関係者席へ案内される。テーブル席につき、バルコニー越しに見下ろす形。「いい雰囲気ねえ。ここいくらで借りられるのかしら?」と益田さんはプロデューサーモード。と、同じテーブルに相席になった若い男の子を「ああっ」と指差し、「知り合い!」と言う。男の子は「知りません」という顔。またぶっとんでる、と思ったら、スリー・アローズに最近入った新人・松崎裕君で、益田さんはスリー・アローズ社長の山下貴裕さんと一緒に彼の出演する舞台を見ていたことがわかる。世の中狭い狭い。
ステージにはグランドピアノ。音楽の倉本裕基さんがまず挨拶をして、劇中曲を2曲披露。「癒し系ピアニスト」という言葉がぴったり。とてもピュアな音の連なりが、すっと心に染み入ってくる。つづいて舞台挨拶。「山田孝之さんが来られなくなりました」と司会のアナウンスがあると、会場からは「ええーっ」のどよめきと、残念そうなため息。山田さんのファンの方が圧倒的多数だった様子。ジェニファの公式サイト情報ではゲストの中に名前はなかったのだけど、来るという情報が流れていたのかもしれない。遠くから駆けつけた人はとくにがっかりしただろうな。挨拶には三枝健起監督、倉本裕基さん、浅見れいなさん、Jennifer Holmes、修行僧トリオの細井役の西尾秀隆(X-GUN)さんと遠野役の湯江健幸さんが登壇。余談だけど、修行僧の名前は一文字目をつなげると「ほとけ」になるようにつけた。もう一人は、坂本真さん演じる剣持。「修行僧です」と倉本さんがおどけたりして、ところどころに笑いも起こり、和やかな挨拶になった。Jenniferも日本語で受け答えし、「昨日パリから帰ったばかりで、ちょっとボケてるかもー」と自然なトークを聞かせていた。見所を聞かれた監督は、「この作品の後半は自分が得意とするファンタスティックな世界だが、深く考えるより、隆志の頭の中をのぞく感じで味わってほしい」といったことを話し、本作りのときにもこだわった「夏の音」への思い入れを語った。上映の前に倉本さんがもう一曲、『夢への誘い』を披露。プロローグにふさわしい曲。「音楽いいね、いいね」と益田さんも気に入ってくれたよう。
いよいよ上映。作品を観るのは二度目なので、一度目よりは冷静に観られた。事前のマスコミ試写で観た知人の感想は、かなりまちまちだった。『パコダテ人』や『風の絨毯』への反応も人それぞれだったけれど、『ジェニファ』は同じ作品とは思えないほど受け止め方に温度差があった。「俳句のような映画」と七十代の知人は言った。観る人の想像力で行間を埋めるようなつくりになっているので、その自由度が解釈の幅を生むのかもしれない。今日のお客様はどのような感想を持たれただろうか。
益田さんは上映中ずっとしゃべり続けていた。冒頭のクレジットタイトルを見て、「あら、これも英語だ(『風の絨毯』のクレジットも英語)」、お風呂のシーンでは「もっと見せたらいいのに」とオッサンのようなことを言い、ところどころで「ここは脚本通り?」「この場所はどこ?」と聞いてくる。ほんとにもう、作品に集中しなさい。「山田君ってすっごくいいね。ああいう難しい表情できる若い役者ってなかなかいないよ」とベタほめしていたけど、ストーリーについてはコメントなし。プロデューサーの佐々木亜希子さんを紹介すると、「彼女美人ねー、すてきねー。好きになっちゃったわー」とあいかわらず魔女田さんぶりを発揮していた。Jenniferとは約一年ぶりの再会。「またあなたとラブストーリーをやりたいわ」と言ってくれた。