2003年05月17日(土)  脚本が届く日

■『風の絨毯』公開初日の朝、NHK-FMシアター『夢の波間』の脚本が届く。脚本家としてデビューしたきっかけはFMシアターだった。『タカラジマ』『雪だるまの詩』につづいて3年ぶりの3作目。今回のお話は大阪に帰省したときに、母と話していて思いついた。古文書(こもんじょ)の研究会に入っている母が取り組んでいたのが、廻船問屋(今でいう海運会社と商社がひとつになったようなもの)の記録で、「何月何日に何をどんだけ積んだ船がどこへ向かったか、きっちり記録してあるねん」と話しているのを聞いて、「一見単なる備忘録のような古文書から、当時の人々の思いを読み取れたら面白い」と思った。そういえば今年は江戸開府400年。かつて船模型をつくっていた現代の男が、江戸時代の廻船問屋の遺した古文書に出会う話にしよう。二人の男の接点は、海。海には夢があり、ロマンがある。そう思って飛びついたのだが、そこからが難航した。日本史の知識は悲しいほど乏しく、歴史小説もほとんど読んだことがない。昔の和船の構造と洋船との違い、年号や時間の呼称、鎖国について、神社について、船模型について、調べることは果てしない海のようにあった。物語の舞台である「佐野浦」は、現在の大阪府泉佐野の辺り。母と、古文書仲間のD氏が本や写真や新聞の縮刷版コピーなどをどっさり送ってくれ、船旅を助けてくれた。着想から脱稿まで5か月近く。寄り道したり漂流しかけたりの長い旅だったので、脚本完成のよろこびはひとしお。少しずつ島影が見えてきて、やっと船が着いたぞ、という感じ。印刷された脚本を見ると、いよいよ作品になるという実感が湧いてくる。この瞬間がたまらない。■現在開発中の脚本作品は、映画。午後4時半にはじまった打ち合わせは、翌朝18日の9時まで続いた。トイレに立った一回以外は椅子に座りっぱなし。机の上の食料をつまみ、お茶をとっかえひっかえしながら、話し合いと同時進行でキーボードをたたき、本を直していく。眠気と疲れで脳が酸欠状態になる中でのアイデア出し。しんどいけれど、集中してたたいた本が確実に良くなっているのが見えるのは楽しい。本が届く日まで、もうひとふんばり。

2002年05月17日(金)  人生最高の日〜『パコダテ人』最終日
1979年05月17日(木)  4年2組日記 今日から日記

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