2002年07月14日(日)  戯曲にしたい「こころ」の話

戯曲のことを考える。昔書いたコメディーを書き直す方向で……と演出家との間で話はできているのだが、「いっそ新しいものを書いては、どうだろう」と思いはじめている。演じるのは、プロの役者になる前の研修生たち。コメディーよりも泣かせる話のほうが演じやすく、お客さんを引きこみやすいのではないか。大切なのは、その舞台で「味をしめてもらう」こと。自分の台詞が人の心を動かせるのを身をもって体験することが、役者の卵たちにとって、何よりの栄養になるのではと思う。

時間ができたので、書きためておいたプロットに目を通した。シナリオを書きはじめた頃、あたらしい話を思いつくたびに、原稿用紙4枚分ほどのプロットを書いていった。順番に肉付けし、シナリオにしていく予定だったが、思いつく早さに書く早さが追いつかなくて、ほとんどが骨のまま残されている。ひさしぶりにデータファイルを開いたら、書いた本人が忘れたような話が次々と出てきた。ひらめいた瞬間の「冴え」のようなものは、時間が経っても残っていて、「我ながら、面白いこと考えるなあ」と感心するアイデアがいくつかあった。反面、「変なもの考えるなあ」「つまらなさすぎるなあ」とあきれ返るものも。同じ人間が生み出したものなのに、時期や気分によって全然違ったものになるのが面白い。

ファイルの中に、プロットになる前の走り書きのようなものがあった。その中に「戯曲にしたい」と、そそられるアイデアが1本見つかった。『こころ』の話。どんな物語も多かれ少なかれ『こころ』を描いているが、これは直球ストレートで『こころ』に迫る。テレビドラマだと熱すぎるかもしれないが、舞台だとちょうどいい温度ではないだろか。台詞もまっすぐ心に届くものにしよう。プロットを起こしはじめると、涙がじわり。こういうスタートを切る作品は、うまくいく気がする。

2000年07月14日(金)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)

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