2002年03月26日(火)  短編『はじめての白さ』(前田哲クラス)

■会社のM先輩が「とある制作会社の社員旅行」の話をしてくれた。毎年、企画委員会が結成され、凝りに凝った社員旅行をプランするのだが、前回は伝説になるほど気合いが入っていたという。目的地の沖縄でロケハンを重ねた企画委員会は、架空の『○×王国』を建て、某旅行情報誌そっくりなガイドブック(書体からレイアウトから挿し絵のタッチまで精巧に真似た芸術品!)まで作ってしまった。さらに王国のパスポートを配り、那覇空港の一画を借りて入国管理まで行う徹底ぶり。目玉企画のラリーがまたすごい。部署も年次もバラバラな4人1組が1台に乗り込み、与えられたヒントをもとに宝を探すのだが、「指示された場所に着くと双眼鏡が置いてあり、そこからぎりぎり見える看板にヒントが書いてある」といった凝りようで、なかなかお宝に辿りつけない。4人の中にプロデューサーがいると仕切りは完璧だが、理屈よりも直感で行動するプランナーがそろったチームは悲惨な目に遭う。各チームは羽田に集合したときからユニフォームを着込み、飛行機の真ん中の4席を1チーム1列ずつ占める。前から見ると万国旗のようだとか。面白い。面白すぎる。なんで社員旅行ごときに、そこまでやってしまうのか。言ってしまえば「ノリ」だろう。楽しませたい、楽しみたいというノリは、ものすごいパワーを生むのだ。■21:20よりテアトル新宿でENBUゼミの作品上映イベント『ドロップシネマ・パーティー』。前田監督と熊切和嘉監督の対談に続いて熊切和嘉クラスの『LOCK』、前田哲クラスの『はじめての白さ』、三枝健起クラスの『ジェラシー』を観る。対談では、前田監督は強引な話術でパコダテ人の売り込みに終始。落ち着かないのか、膝がパカパカ開閉してタンバリン状態。開けるか閉めるかどっちかにしなさい。客席にいる松田一沙ちゃんのことは「会って、みちる役は彼女だと確信した」と持ち上げておいて、わたしのことは「毎日のように無言留守電残してたら、変な人やと思われてたけど、会ってみたら、向こうが変な人でした」と落としてくれた。さて、『はじめての白さ』はコインランドリーを舞台にした11分の短編で、思いのほか楽しめた。ベートーベン『歓喜の歌』に合わせてブラやショーツが飛び交うシーンは最高。こういう絵をキュートに撮れるのはすごい。前田監督は監修とのことだが、とてもテイストが出ていると思った。口は悪いけどノリはいい。

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