■就職活動時代、東京から西へ向かう新幹線の中で出会った同級生のS君は、第一印象から不思議な人物だった。先日五年間の渡米生活に終止符を打ち、日本に帰ってきたが、渡米のきっかけは地下鉄サリン事件に遭って会社を辞めたことだった。ひょんなことからアソシエートプロデューサーとして関わった映画『Bean Cake』がカンヌ映画祭で受賞し、授賞式にも行ってきたという。そのS君から「team Oscar」メールが届くようになった。オスカーはあのアカデミー賞のオスカー像だ。それを手にするために今日自分は何をしたかが短い文章で綴られている。「しまった!何もやっていないのに一日が終わった!」「今日はこういう本を読んだ」といった具合。誰かに読んでもらうことで自分を奮いたたせているのかなあと思う。わたしは何をめざすのかな。■『ディズニーファン』のコラムで、パパイヤ鈴木さんがかつて東京ディズニーランドのダンサーだったことを知る。Disneyland is your landの歌詞に「好きなことはなんでもかなう」という一節があるという話に続けて、「必ず雨が降る雨乞いの踊りというのがあるんですけど、それはどうしてかというと、雨が降るまで踊り続けるからなんです。だから、夢だって見続けていれば絶対かなうんです」。夢を見続けるにはエネルギーが要る。雨乞い踊りを続けるように。ほめられたり認められたりすると馬力が出るが、神様のごほうびがないと、ガス欠になって立ち止まってしまうわたし。
(後日談。2004年、朝日新聞で、漢字一文字をタイトルにして毎回一人の行き方に光を当てるコラム連載があった。ある日、目に留まったタイトルは『夢』。取り上げられていたのはS君だった。記事を読んだときはこんな日記を書いていたことを忘れていたけれど、タイトルが同じでびっくり。2004年6月16日)