度々旅
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2007年03月07日(水) 食に愛される

 ここのところ、父と食べた場所、というか、父が好んでいた食べ物巡りをしている。父が家にいるうちに、私が変わりに食べるのだってな具合だ。
 父が亡くなった次の日に、ちょっと遠い蕎麦屋のおかみさんがかけつけてくれた。葬式の後、母と私と親戚で蕎麦屋に寄ったら、お父さん好きだったからと、てんぷらの盛り合わせを若女将が涙とともに出してくれた。それをかわぎりに、餃子を食べ、小龍包を食べ、うなぎを食べしているけれど、その中でも父にとって、ここさえあればいいという2軒があった。
 
 父の荷物を会社に引き取りに行った日、もう退職している父の先輩でもある私の仲良しのおじさんも会社に付き合ってくれた。帰り道、母と私とおじさんと、父の会社の人2名(二人は早退してたよ)、総勢5名プラス荷物に姿を変えた父で、行きつけのモツ屋に寄った。そこは、2時から並んでいるのだ。若旦那は、赤い目で一言「残念です」と言いながら「お父さんの分」ってことでモツと焼酎をくれた。決して持ち帰りはさせてくれないはずが、最後そっとお土産をくれ、私に「お母さんよろしくね」と言ってくれた。
 ちなみに、その後ワレワレは父荷物を店に忘れてきて、若旦那に「お父さん忘れているよ!」と追いかけられた。
 
 今日、食べ物巡りの〆としてもう一軒の行きつけの飲み屋に、母が父の大好きだったナンコツを買いに行ったら、すでに父のことは知られていた。どうやら通夜の帰りに会社の人たちがそこで飲んだらしい。母の顔を見た途端、言葉をかけてくれ、あれも好きだった、これも好きだったと、これまた通常持ち出しさせてくれないものをお土産にくれた。

 父がこよなく愛した2件の下町のモツ屋。オレはこれさえあればいいと言ってた食べ物。その食べ物も父を愛してくれていたような気がする。なんて幸せな男だろう。そして、店の人たちの温かさがしみてくる。
 


こげんき |MAILBBS

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