猫頭の毒読書日記
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2005年07月30日(土) |
花のギャラリー(描かれた花の意味) |
小林頼子著 改訂新版 八坂書房2003年7月刊 カラー図版90点
花卉画の終焉と近代絵画の始まりについて大変面白かった。
内容 花卉画を造形性とともに象徴的メッセージの両面から解説する。 描かれた花の意味=花のアトリビュート(象徴)
はじめにー花でつづる西洋絵画 の要旨
西洋美術史の中で、花の絵がまとまった考察の対象になりうるのは ルネッサンスの時代が始まるころ。
神のはしためとして目に見えぬ事象をひたすら象徴的に描き出していた絵画は、 現実空間を映し出す鏡に変わり、描写技法は写実主義へと転換したが、 外観の大きな変化とは裏腹に、思考の枠組みとしては かっての象徴の大系をそう簡単に捨てることができなかった。 15,16世紀の花の描写は、この面での考察をないがしろにすると、 作品の意味を取り違える可能性がある 近代的な花卉が画誕生したといわれる17世紀になっても作品の意味を規定し続けていることもままある。 オランダのフランドル派などの花卉画についての意味の問題は、 スェーデンの美術史家ベルクストレームが端緒を開き、 植物学者から美術史かに転じたセガールが研究を進めているが、 慎重な検討を要するケースが多々ある。
巻末論考目次
西洋絵画の中の花 花卉画を成立させた背景 ギリシア・ローマ時代の花の描写 中世と花の描写 花の描写におけるネーデルランドの重要性 花卉画の成立前史ー 象徴の花 寓意の花 花卉画の成立に向けてーフフナーヘルとルドルフ二世 花卉画の第一世代 オランダで活躍した画家たち フランドルに活躍した画家 第一世代の花卉画の特徴 成長期の花卉画 円熟の花卉画 花卉画の洗練 18世紀の花卉画 超絶技巧の花卉画 花卉画の終焉 17世紀花卉画の解釈をめぐって アトリビュートとしての花 花卉画の宗教的解釈 文学的テクストと花卉画
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