甘美な哀愁を漂わせている男のピアスの穴は4つ。
わたしは2つ。
「どこであけた?」と興味ありげに聞く彼。
「氷で麻痺させて安全ピンで友だちがあけたの」
「うっ・・・。普通病院だろっ?!」
「え・・・。 じゃあ、病院であけたの?」
「うん」
「6つあけたかったけど医者に4つまでにしとけって言われた。 病院が安全だよ。・・・・安全ピンはないだろ・・・? 刺されるより刺す側の方がつらいよ。」
そうかもしれない。
刺すほうも刺されるほうもつらいにちがいない。 その時のわたしは、痛いとかつらいとか そんなことはどうでもよかったのだ。
肉、血、皮膚。
わたしは人間的特徴を備えているけれど ピアスをあけた10代の頃のわたしには、感情がなかった。
欲望と嫌悪感だけがあった。
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