きのうの夜景は・・・・ 今まで見たどんな夜景よりも美しかった。
数多くの色とりどりの電灯を用いたイルミネーションのような ストラトスファイアタワーから見下ろすラスベガスのものでもなく
地平線まで敷きつめられた光のアーケードのような エンパイヤステートビルからみるニューヨークのものでなく
帰宅途中の車窓の左右から見る宝石の街をみるような 日常の暮らしのなかで見つけるサンフランシスコのものでもなく
深海に敷き詰められた光粒の絨毯のような オアフ島のタンタラスの丘からみえるものでもなく
100万ドルの夜景といわれる香港のものでもなく
湾曲する海岸線に瞬く街の光が 無数に散りばめられた星くずのような 異国情緒豊かな港町の長崎のものでもなく
空を飛ぶ鳥が獲物を射るような目でみるように ヘリコプターからみる星降る夜の東京のものでもない
午後から降り続いた冷たい雨があがって
雨上がりの都会の空は 吐かれたタバコのけむりのように霞がかかり
漆黒でもなく 真っ白でもなく 灰色でもない そんな闇色の夜空
新宿方向の夜空には高層ビル群がみえて 点滅する赤い閃光灯をじっと見ていると
吸い込まれそうなほど深い夜の 吸い込まれそうなほど神秘色の闇のなかに 何の境界もない究極があった
吸い込まれそうなほどの速さで 吸い込まれそうなほど純粋に すべてから解放され その時に至るまで祈るように指を絡ませた
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