招待状が届いて陶器の個展を見に行ったのは めずらしい個展だったから。
日本人のそれではなくドイツ人の個展だった。 不思議な形をした作品が並ぶ個展だ。 三角形の湯飲み茶碗や、ひし形のコーヒーカップ。
どうやって使うんだろうと首をかしげるようなものばかり。 手に持った感じがいいとか、心が和むとかいう そんな日本独特の感覚はない。
そのドイツ人は個人的に知っている人ではなかった。 でも面識はあったので、彼はわたしを見つけると 談話していた人たちの輪から離れ わたしにソファーに座るように薦めてくれた。
ソファーに移動するとコーヒーが出され 一緒に行った彼と陶芸家から彼の作品について説明を聞いた。
作品の説明をしながら 淡いグリーンの目をしたドイツ人陶芸家は わたしにウィンクをした。
一緒にいた彼は、何事かと不思議そうにわたしを見る。 疑いの目を向けられて慌てたわたしは、会話を続けながらも 頭の中では自分の遠い過去の出来事を検索した。
そうだ・・・。 昔・・・この陶芸家の家をわたしは訪問したことがあったのだ。
彼は自分の窯をもっていて、それを見せてあげると言われ 山奥にある自給自足の彼の家に遊びに行ったことがあった。 確か・・・、アーティスト特有の隠れ家のような家だったと思う。
作品の話と絡めて、自分の家にある窯の話しのたびに 陶芸家は淡いグリーンの目でわたしにウィンクする。
なるほどね・・・。
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