休み明けだというのに わたしたちは夜景を楽しんでいた。
丸ビルの4Fにある丸善のとなりのカフェ。 地味な所にあるせいか空いているので穴場だと思う。 幸運にも窓側のソファーが空いていて、正面には ライトアップされた赤れんがの東京ステーションを眺められる。
まわりはスーツ姿のヤングエグの男女が3、4組 それぞれ書類を見ながら仕事の話をしている。
頼まれたビデオをあゆみさんに手渡して用事はすぐ済んだ。 18年ぶりに優勝した球団の話をちょっとしてカフェを出て 地下のお惣菜コーナーへ向かった。
贅沢して洋ナシの赤ワイン煮のデザートも買う。 好きな無花果の赤ワイン煮は旬の期間が短く、 残念ながらすでに販売期間が終了していた。
無花果は面白い花だ。 実のようだけどあれは花。 割ってみてはじめてその中に見える花。 厚い果肉に覆われていて外からは見えない。
外からじゃ見えない。
外からじゃ、見えないのが人の心のようで好き。 でも、人目につかないよう大切に隠しているものを それを、丸ごとパックと食べてしまう残酷さがもっと好きだ。
大切なもの、それはわたしのものではない。 大切なものをそっと隠しそれに執着していると いつか自分ごと何かに丸呑みされてしまう。 無花果は、それを例えてくれてる。
最寄の地下鉄の駅まで二人で歩くと まだ秋の夜風ではないけど涼しい風が頬をなでてくれる。 気持ちがいい。
大阪があんなに熱くっても、 相変わらずのあゆみさんとわたし。 途中、新しくできた素敵なカフェを見つけた。
「今度ここで待ち合わせしましょう。」
あゆみさんの言葉に そうですねとうわの空で答え
あの5000人ものった橋ごと川に落ちればいいのに・・・ と思うわたし。なんとも嫌なヤツだ。
熱狂する人は嫌いだ。
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