その静かで誰もいない海は、北関東のはずれにある。
遠くに松林が見えるぐらいの 広くてきれいな砂浜なのに、いるのは 他県ナンバーのバンでくるサファーぐらい。
私たち家族は恒例のように、海が青くなりはじめる初夏に 助手席に母をのせ、高速にのってそこまでドライブする。 晴れた日の6月は、梅雨に入る前でとても空が青い。
こういうときの父はというと・・・ 一緒に車に乗っていこうと誘っても、ぜったいに譲らない。 バイクで行くといってきかない。
いつもそう、今もそうだ。 どこかに家族旅行しようというと、 自分はバイクでいくからと主張する。 年老いた体でそれはあぶないって・・・ だから、母とわたしはいつも気が気ではない。
でも わたしたちの心配とは裏腹に、父はとても楽しそうで わたしたちが乗った車を誘導するように、先に走っていく。 ただ呆れる母とわたし・・・
その頃乗っていたLEBELは、父にはきつくなっていたのか いまはSKYWAVEに乗る父。
なんだかだいぶ年を取って見える・・・
バイクのことはよく知らないけど、SKYWAVEは スクーターの大きいやつなので、乗る体勢がすごい楽らしい。
跨ったときに、もっと前傾スタイルになるほうが カッコいいと思うんだけど・・・年じゃしょうがないね。
すでに乗らなくなったGB500の手入れをする父。
過ぎてしまった時間を想う老いを感じ、 わたしまで切なくなってくる。
バイクで大腿骨を骨折し半年以上入院したり それが原因で会社をダメにしたり
家族はもちろん、親戚、仕事仲間からも バイク禁止をいいつけられ・・・
でも、
還暦を過ぎたいまもバイクに乗ることを諦めない。
父のように、老い、くすんでいく中で、 それでも情熱を持ち続ける人も稀にいる。
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