un capodoglio d'avorio
2003年04月22日(火) |
one tone@MANDA-LA2 |
ちなつ嬢がボーカルなユニット"one tone"のライヴ、 吉祥寺のMANDA-LA2にて初見、ねこばすクン同伴。 ビックリした。 多分、ビックリするんだろうね、って思ってたら、 そのビックリ度合いは、予想をはるかに上回ってしまった。
音が澄んでいる、そして、押しつけがましい主張はない。 でも、観客との距離はしっかり把握、離れちゃわない。 観客が何かしらの作業で、隙間を補填するまでもなく、 それはそこにあり、落ち着いてくつろいでいられる。 ジャズ嫌いなどかで、それだけが来るまでは少し不安だったけれど、 いわゆるジャズの「いやらしさ」はそんなに感じなかった。 というか、むしろバロック音楽を聴いてる感じ、平衡がそこにあった。
ちなつ嬢の声は、ちょっと度肝を抜かれるくらい美しい。 その美しさは鉱物の無機質的な美しさではなく、 温かみのある有機的な美しさ。 たとえばそれはエメラルドの緑ではなく、新緑の木々のそれ。 そこには意志があり、ある定点から発せられるベクトルがある。 ギターも、すっごい上手で、凝った演奏にもまったく安心して聞いてられた。 キーボードもパーカッションもイイ意味でリラックスしていて、 ちゃんと「音」じゃなくて「音楽」が立ち上がるから気持ちいい。 唯一気になったのは、パーカッションの音の定位。 アンプだかなんだかの音のセッティングの問題だと思うけど、 ちょっと、響き方がずれてる時があった気がするのだけれど、 演奏の問題ではなく・・・気のせいかな。
2曲目はちょっと、どかの中ではパッとしなかったかな、他と比べると。 どかが一番好きだったのは4曲目「君のところへ」。 3曲目の「明日から吹く風」も良かった。 歌詞の世界が、イイ意味でとてもステイブル。 小さい空間に、短い時間に「いま、ここ」という焦点。 「ここから、どこかへ行こうよ!」とか、 「ものがたりのうねうねの中へ」とかではない、 しずかにおとなしく凪いだ感じのたたずまい。 それがどかには、特に、きょうこのごろのどかにはとっても嬉しい感じ。
空に のびてゆく飛行機雲の 跡をたどって 君のところへ 今すぐに 向かいたいけど 風にあおられ 辿り着けない (「君のところへ」lyrics : Chinatsu Miki)
頼りにしたいひこうき雲は、薄れて切れてしまい、 けっきょく「いま、ここ」から離れては行かない。 でもだからといってネガティブな印象のみかといえばそうではなく、 メロディ、演奏、ボーカルの表情、声が、 きちんとポジティブな明かりを提示してくれるから、 観客は暗闇にまかれてしまわないですむ。
ただ、一部の歌詞に関しては、言葉の選び方など、 イメージの広がり方が「目指すところ」と「実際」との間で、 少しズレがあるようにも思えたり。 演奏に関してはとてもすっきりと音が整理されているだけに、 そのイメージの「ムラ」が気になったり。 でもそもそも、オーディエンスへメッセージを伝えようとする、 確固たる覚悟がアーティストサイドになるからこそ、 僅かなズレが顕在化してくるのであり、 <「表現」に留まらない「伝達」への確固たる意思>にこそ、 まずどかは好意をもった。
確実に、どか自身の「ヤな流れ」を一瞬、せき止めてくれたと思うの。 CD買おっかな、と素直に思うくらいに良かった。 また行きたい。 ってか、行きます。
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