un capodoglio d'avorio
1999年07月11日(日) |
つか「新・幕末純情伝」<つか役者について> |
「つかこうへいダブルス2003 幕末純情伝」の楽前と楽日を観劇したあとでこの文章を書いている。前回の上演を総括した上でないと、2003年バージョンについてのレビューは書けないと感じたどか。この芝居を見たときは、まだどか、大学4年生だったんだなー。あのころのどかったら(以下略)。今回はちょっと本気モードでレビューを書くことにする。本気モードでなくちゃ、いけない気がするから。
第一期つかブームは70年代後半〜80年にかけて。その後つかは演劇から距離をおいて、作家活動に専念する。つかが89年の「今日子」、90年の「熱海殺人事件」「飛龍伝」などで復帰するまでの空白の8年間は、野田秀樹や鴻上尚史が第一線で活躍。復帰後の第二期つかブームは、どかが観劇を始めるギリギリ直前、94年〜97年だとどかは考える。厳密に言うと、ブームとは言えないかも知れない。第一期のように、一世を風靡した時代を代表する舞台を作ったのだと第二期については言えないから(時代の代表はあくまで野田の「キル」であり鴻上の「スナフキンの手紙」、もしくは新感線やキャラメルなのだろう)。ではなぜどかが第二期つかブームを敢えて設定するかと言えば、この時期のつかのもとには珠玉の役者がお手馬として揃っていて、それは第一期の風間杜夫などの<つか十勇士>にも勝るほどに、空前のクオリティだったからだ。それは後にも先にもついに実現しなかった、本当にこの時期だけに全ての条件をクリアして顕れた、緑色のオーロラのようなものだ。
その珠玉のつか役者とはつまり、筧利夫、春田純一、山崎銀之丞、山本亨、木下浩之、池田成志、平栗あつみ等である。そしてこの珠玉の役者を配してつかが最高の演出をつけた究極の2つの結晶が94年の「飛龍伝」であり、95年の「銀ちゃんが逝く」なのだ。どかは幸いにも前者のVを見る栄誉に与ることができ、その「全速力の痛み」が発する目映いばかりの光はいまも脳裏に焼き付いている。90年代後半にさしかかりつかは行政と結託して劇団を創設、若手役者の育成に力を注ぎ、反面自らの珠玉のお手馬で舞台をうつ機会は急激に減っていく。つか演出は「北区」や「大分市」の若手劇団につけられ、その役者の力量不足による完成度の低下を嘆くファンへの贈り物のように、かつての黄金メンバーの「同窓会」のような舞台が生まれる。それがつまり、つか戯曲だがつか演出ではないという微妙な違和感と、圧倒的な役者の力量とがない交ぜになった不思議な作品「新・幕末純情伝」である。
↑パンフとチケット(まだ残ってたのがスゴい)
どかは1999年7月11日、いまは名前を変えてしまった銀座セゾン劇場のソワレ「新・幕末」千秋楽を観た。何と言っても、筧利夫をつか芝居で観られることへの興奮、劇場に入って席をさがすときも脚が震えていたのを覚えている。当時、筧はまだほとんどテレビのバラエティやドラマへの露出もなく、職業・舞台役者としてのギラギラ度がハンパなかった。終演後のカーテンコール、つか芝居楽日恒例の「予告編寸劇」も楽しく、また来年も観たいなーと思っていた。・・・思っていたのに。
・・・まさか、その後、この珠玉の「同窓会」が開かれるまでにさらに4年半の月日がかかるとは。その間、もちろん幾多のつか芝居が生まれては消えていったが、知名度ではなく、純粋に舞台役者のクオリティという点で観たときに、あの「同窓会」に迫る舞台は一つも無かった。「蒲田」もやった。「飛龍伝」もやった。「銀ちゃんが逝く」もやった。しかしどれも、かつての名シーンを観ながら「現在の」役者の不足を嘆かざるを得ないことが少なくなかった。ひどいときはどかは、「現在の」舞台を観ながら目を閉じて、珠玉の「同窓会」メンバーを想起するという極悪非道の行為にすら手をそめた。言い訳はしない。ヒドいことをするなと自ら思うけど、でも、それだけ、あの黄金のつか役者たちの名セリフが、緩い出来の役者に上書きされるのが我慢できなかったのだ。それだけどかにとって、つか芝居はスペシャルだった。
極私的つか役者ランキング(1999.7.11時点)
S : 筧利夫・池田成志
A+: 山本亨・山崎銀之丞
A : 木下浩之・春田純一・藤山直美(※)
A-: 平栗あつみ・鈴木聖子
B+: (不在)
B : 阿部寛・鈴木祐二・安村和之
B-: 吉田智則・石原良純・小川岳男
C : (多数)
1999年時点でのどかの中でのランキング。とくにどかが言いたいのは、AランクとBランクの違いは限りなく大きいと言うこと。この「新・幕末」ではAランク以上の役者が何と、5人も出演していたのだ。それがひとりでもいれば、舞台が充分成立してしまうほどの華が5人もいたのだ。だからつか演出じゃなくても、つかが書いた台詞を彼らが言うだけでもう、どか的には驚天動地の感激だったのだ(藤山直美については、まあ、前年の「寝盗られ宗介」のみへの出演であり、今後つか芝居には出ないだろうと言うことも明らかだから「つか役者」とは言えないかも知れないのだけれど)。
(続く)
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