※フィクションです。
それはとある平和な日の出来事。
久しぶりの休暇を一日満喫していたサブロー氏(仮名)は、台所から漂ってくる不可解な香りにその眉をひそめた。 そこでは、Mが本を片手にぐつぐつと沸き立つ鍋を前に何やら怪しげにぶつぶつと呟いているところであった。 「・・・何してるの。」 呪いですか?と言う言葉を危ういところで飲み込み、とりあえず努めて冷静にたずねるサブロー氏。 「夕飯。」 作ってるんだけど?と言わずもがなと言わんばかりに答えるM。 よく見ると、どうやら手に持っていたのは料理の本で、そのレシピを復唱しているところであったらしい。 ああ、そうなの、と少しほっとするサブロー氏。 よかった。 もちろん、人を呪わば穴2つ、という言葉を知らないMではないだろう。 しかし、「2人でカー乗ってると、クラッシュしてもなんかお前だけ助かりそう・・・」と、B'zも歌っているように、なんだかMの呪いは効き目がありそうなのである。(どんなたとえだ。) しかし、鍋の中では、現在進行形でもこもこもこと得体の知れない「何か」が育っているようにも見受けられる。 (聞こうか聞くまいか、なんとなく怖いがどの道今日の夕飯で自分が食わせられることには違いない。聞いとこう。)←サブロー氏心の葛藤。この間推定0.5秒。 「何作ってるの?(おそるおそる)」 「んー・・・スペインのスープのレシピを簡単にしたものらしいよ。」 ・・・本人も何を作ってるのか定かでないらしい。 しかし、渡された本を見ると、なるほど、野菜ジュースに玉葱などの野菜を加えたトマト風味のスープであるらしい事が記述されている。 しかし、その完成図と、現在ぶくぶくと化学反応を起こしたフラスコの中身のような様相を呈している鍋の中とでは、何かが根本的に違う気がする。 そのサブロー氏の不安そうな顔を見たのか、Mはあっけらかんと言った。 「ああ、トマト無くてさートマトジュース入れたんよー。」 それだ。 「味見した?」 「大丈夫だよ、人間が食べられるものしか入ってないから。」 そういう問題でもない・・・しかし、完成する前になにか手段を講じられぬものかと味見をするサブロー氏。(というか、それ以前に味見しておけ。M。) 「(口を押さえて。)すっぱいんですけど。」 「レモン入ってるからねー。」 なぜ。 口の中では、先ほど味見をしたスープの、なんとも形容し難い濃ゆい味が広がっている。 「というか・・・スープってもっと、味薄いものじゃないの?」 なぜこんなにぐらぐらと煮詰めているのだ。 「そうだ!何か違うなーと思ったんだよ。」 ぽんっと納得するM。 違うと思ったなら、なぜその時点でやめておかないか、または考え直さなかったのか? 作業を続行するなよ・・・(泣) しかし、滅多に料理をしないMが珍しくやる気になっているのだ。 ここでダメ出しを自分がしようものなら、ふてくされて二度とやらなくなる可能性はかなり、いや、非常に高い。 ここはぐっとこらえて。。。 ぐつぐつ煮立つトマト風味の赤い、と言うか、もはや赤を取り越して赤銅色に近づきつつある液体群を見つめながら、果たしてMを前にこれを食さなければならないわが身を思い、精神的苦痛によるかこのスープ自体によるものか、とにかくいづれにしろ自分の胃腸の明るい未来の確保のために胃薬をこっそり用意しておこう、とサブロー氏は考えたそうな・・・。
※サブロー(仮名)氏の明日はどっちだ? と言うのは冗談で。 結局、量を減らして水で薄め、枝豆を加えることでスペイン風というよりはドイツ村(笑)風味に変身したスープは無事に完成したと言うことでした。
↑ドイツ村でこんな料理あるんですよ。
※しつこいようですが、この話はあくまでもフィクションであり、万が一事実であったとしても、かなり湾曲したものであり、ええと…とにかく、実在の人物とは関係ありません。(多分) つうか、ここまでひどくはないです。 いくらなんでも。
*次回、「とある日常の1コマー監視員男21歳受難の巻」で、お会いしましょう。 って、嘘ですったら。
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