白い吐息はタバコのようにも思えた。 窓の外の空は何色とも言えない、不機嫌そうな色をしてこっちを向いている。 ―この冬はどうしようか―
今にも雨が降り出しそうな、もしかしたら雪が降るような。出掛けに天気予報でもみてくればよかったと後悔した。当てにもならないけど、見ないよりは見ておいたほうがいい。傘を持つかどうか位の目安になるから。悴む左手はどうしようもなく宙を彷徨って、それから仕方なくポケットにしまった。 ―どうすれば上手く歩けるのかな―
失った重さより、自分自身を見失ったことの方が辛い。イコール関係になるのかもしれないけども、僕にとってはまた違う問題で、もうすでにそこには「ミク」はいなかった。と言っても、もちろん自分もいないけど。 手のひらに残る儚い温もりは当分残りそうだ。どうせ、いつかは忘れてしまうようなものだけど、今はきっとすがりついていたいのだとも思う。 ―男はいつだって女々しいんだ―
地面はゆっくりと色を変えていった。少し濃くなって所々に水溜りを作った。それがいつまでも続くような気がしていた。傘を買うこともしなかった。「ミク」を探すことも。気にしない振りでもしていれば一層辛くも何ともないのだろう。そこまで強い人間でもない。雨の匂いは久しぶりに感じる冬という季節を感じさせてくれた。 ―導くのはこの雨かい―
ミクが言うことも少しは当たっている。 「どうせ、あんたなんか私しか愛せないんだから」 でもね、新しいことも必要だなって思うときもあるんだ。ただの身体なんだから。思い上がりや、期待でも。全てひっくるめたら、やっぱり 「ミク」なんだ。女々しいんだ。 ―雨上がりを待ってみようか?―
「帰ってくる場所があっていいわね」 出掛けに言われたことを思い出した。 やっぱり女々しい。
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