−夏ってこんなに涼しかったっけ?−
朝とも昼とも言えない時間に生卵をかき混ぜながら、意味もなく考えていた。
−今日の夢は片手で卵を割った夢だったな− だから、食事に生卵を使った訳じゃない。もう腐りかけで昨日炊いたご飯も残っていたから・・・というだけの話だ。出来ればフレンチトーストを食べたかった。朝からご飯というのは、いかにも典型的な日本人にたいでどうも・・・。っと思っていたら口の中で「ガリッ」という音がした。
−夢の中じゃ上手く割れたのに−
蝉の声が聞こえない夏・・・物足りない気もする。今年はドコの海水浴場も客付きが悪く、海の家の経営者はブラウン管の向こうで今年は・・・と嘆いている。ビールメーカーも同じだろう。発泡酒が値上げしてこの夏は勝負だったのに・・・と嘆いてるはずだ。僕はクーラー代が浮いて少し喜んでいる。それでも毎晩ビールは欠かせないけど・・・。
夏がもうすぐ終わりそうな頃、急に暑くなった。まるで赤道付近に旅行でも来たみたいだ。まあ、これで少しは海の家の経営者も胸をなで下ろしているだろう。ビールメーカーも何とかって所かな。僕は今月の電気代の請求に脅えている。
蝉の鳴き声が聞こえている。夏らしいと一言もなかった今までが嘘のように、毎日キャスターが夏らしいを連発している。季節を一つ越えるために一つの言葉が繰り返され、次の季節になると違う言葉が使われる。その繰り返し。
結局今年の夏も暑かった。 卵を上手く割れずに終わった夏だった。
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