not ready

2003年08月08日(金) 10年ぶり

「10年ぶりに帰ってきたんですよ!」
嘘だった。実の所、去年もこの街に帰ってきた。ただ、会話のきっかけとしてこんな嘘を付いてみた。地元の人と話してみたいという気持ちもあった。
「変わったじゃろ、この辺も。」
予想通りの反応。おじさんは汗を額に浮かべながら鉄板の上にキャベツを山盛り載せた。鉄板の上で食べるお好み焼きは久しぶりだった。
「10年前っていったらまだガキでしたから何も分からないですよ。この辺も変わったんでしょうけど・・・。」
下らない嘘をまた一つ。おじさんは小麦粉をたらしてヘラで裏返した。
「パルコとか建ったけんね。一個道路潰したんよ!そのためにね。」
「そうなんですか!」
それは知らなかった。パルコじゃなくてそのために道路を潰したことを。大して大きくはないパルコだなと通った時に思った。新館があるためにとりあえず二つあるが、渋谷に比べれば本当に大したコトのない広さで、実際入ってみたが、結局僕は本屋にしか入らなかった。これで全部買い物を済ませてしまう広島の若者の気が知れなかった。
「今、ドコに住んどるの?」
「東京です」
「東京なんて10年いってないのぉ。おじさんも転々としてきたんじゃけど名古屋とか大阪だったけん、東京にはあまり縁がなかったんよ。」
久しぶりに聞くコテコテの広島弁を聞くと帰ってきたことを実感する。きっと、もうこの街は僕の住む場所じゃないなと感じた。あまりに向こうの生活に慣れすぎてしまった。珠に帰って来るからいい場所何じゃないかな?とできあがったお好み焼きを食べながら思った。僕にとっての基盤はここで、それを成長させたのは東京で。だから、ここは思い出の場所だけど、僕を成長させてはくれない。きっとそうなんだ。
「また、東京に帰るん?」
「ええ、明日の飛行機で」
「元気にしんさいね!」
「ありがとうございます。そして、ごちそうさま!」

東京はようやく昨日梅雨明けが発表された。
ここはもうすでに真夏日。歩いているだけで汗が湧き出る。
ビールでも飲んどけばよかったかな、なんて思ったりした。

また、ココに来るときはドコか変わっているのかな?
東京にはない過去の自分の姿がココにはある。
それはいつまでも変わらない幼い自分の姿だった。



















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