私もかなり精神的に参り。
仕事と家を往復するのがやっとで。
栄に会う余裕なんか無かった。
栄に、彼女のことを話すのは、何だか躊躇われた。
だから、栄にとっては、意味が分からないことだと思う。
急にメールの回数も途絶え、会うことも無くなり、電話も出なくなった。
栄は、店の駐車場に来て、私を待っていた。
私は家に帰るわけだから、確実に会える場所だし。
「なんかあったの?ハル君とか?」
栄にそういわれたとき。
「違うよ、子供は夏休みだし、仕事もあるしで、忙しかっただけ」
と、私は言った。
私は、栄の事を、信用し切れていないんだと、分かった。
あったことを、リアルタイムで話す。
それが、私とハルだった。
私は、ハルを信用していた。
だから、それが出来た。
お互いに、他人に壁を作る人間なのに。
お互いに、他人に壁を作る人間だから。
それが、出来た。
そう、分かってしまった今は。
栄とは一緒にいてはいけないと、思った。
それから私たちは、何度もそういう話になった。
栄は。
「納得いかない」
と、言った。
「悪いところがあるなら、直すし、りりかが俺のことを嫌いじゃないなら、一緒にいて欲しい」
とも。
最終的には。
「別れない」
と、毎回言われて、終わる。
「栄、苦しいよ」
って言えば、栄は。
「どうしたらいい?」
と言う。
「それは、何度も言っているけど・・・」
「絶対に、嫌だから」
この数日間。
栄は、毎朝ポストに手紙を入れていく。
私は、朝起きると、まずポストを見に行くのが、日課になった。
子供たちより先に、ポストから出さなきゃならない。
一昨日は、写真と一緒にダイヤのネックレスが入っていた。
「捨ててもいいよ」
って、綺麗なメッセージカードと一緒に。
栄が壊れて行くのが、目に見えて分かった。
だから、早く止めなきゃならない。
彼の暴走を。
私だけの、力で。
|