夜、うちの下に栄が来て。
20分くらい話す。
「初デートはどこに行きたい?」とか言われて。
私はやっぱり「分からない」って言う。
だって、本当に分からないんだもの。
どこに行きたいとか、誰と一緒にいたいとか。
考えていると、ぐちゃぐちゃになる。
なのに、私は普通に笑っていられる。
普通に「栄が考えておいて」なんて言える。
栄といても、どうしてもハルと比べてしまう。
ハルならこういう時に、こう言うのに、こういう時に、こうしてくれるのに。
悪い事とかは、思い出さない。
良かった事ばっかり、思い出す。
だから、悲しくなって。
何やってるんだか、とか思う。
そんなに急に、誰かを大好きにとかなれないし。
そんなに急に、大好きだった人を忘れることは出来ない。
だから、ゆっくり好きになってくれたらいい。
栄は、そんな風に言う。
ハルから電話が来て。
「別れて数日だけど、何もする気になれなくて。やっぱり、だめなんだなぁ」
なんて言われる。
私は、思わず泣きそうになる。
私だって、何食べても、何聴いても、あなたとの3年半に関連付けてしまっているよ。
なんて事は言えずに。
「でも、いつか風化するよ」
わざと、突き放す事を言ってしまう。
ハルが。
もう、私のことで悩まなくて済むように。
私も。
ハルの事を色々考えなくて済むように。
時間はきっとかかるけど。
いつか、そういう日が来る。
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