先月の終わり。
エッチの最中にゴムが破れた。
違和感に気付いたあいつがすぐに出したので「危なかったね」と言い合った。
最後までは、行ってない。
でも、最後まで行かなくても、妊娠すると言う知識くらい、私だって出産経験者だし、知ってる。
それでも、すっかり忘れてた。
今日は、素晴らしくよいお天気で。
私が休みの日に、こんなよいお天気なんて珍しく。
朝から張り切って布団を干し、洗濯物を干し。
子供達とドライブついでに、デパートなんかも行った。
ダイソーであれこれ見て、会計が終わった後、めまいがして。
慌てて長女がお茶を買いに走ってくれて。
しばらくベンチで座っていたら、よくなって来て。
でも、帰宅したら、凄いだるさと吐き気。
ここ数日、また肺は痛いし、咳は出るし、風邪だな・・・なんて思っていて。
彼にメールで、そんな事を告げたら。
「妊娠じゃないの?」
と。
「先月の終わり、ゴムが破けたじゃん?」
って。
「とにかく、下手に薬を飲まないように」
続けて3通メールが来た。
ドキドキした。
まさか、と言う思いと、でもあの時、と言う思いと。
「大丈夫だよ」
ってメールを返したら。
「そう言えば、りりか、最近生理来てないじゃん」
手帳を見てみたら、先月は10日頃だ。
でも私は、きちんと来る体質じゃないし、余り気にしてなかった。
「出来ていたら、年内には一緒に暮らそう。生まれるのは来年の夏だから、ちょうど子供たちも夏休みだし、東京に帰って出産も出来るよ」
気が早いなぁ。とか思いつつも。
浮かれていたかも。
嬉しかったかも。
なのに、夜の電話で。
「H、出来ていたら嬉しい?」
浮かれて聞いた私に。
当たり前だろーなんて言う答えを期待していた私に。
「正直、困ってる」
と、あいつは言った。
不意打ちを食らった私は、黙り込んでしまった。
「子供は、あの子たちだけで俺はいいと思っているから。だから、困ってる。迷ってる」
私や、あいつが、生まれてきた赤ちゃんも、今いる3人の子供たちも、同じように愛せたとしても。
あいつの親御さんや親戚の人たちは、そうは出来ないかもしれない。
その時に、今いる3人の子供たちが傷つくのが、怖い。
だから、自分たちの子供は、あの3人で充分だと思う。
それでも、妊娠したとしたら産んで欲しいとも思う。
でも・・・って。
ぐるぐる同じ所を回る。
そんなような事を、黙ったままの私に、あいつは淡々と言った。
私の事や、私の子供たちの事を。
第一に考えてくれるあいつは、素晴らしいと思うし。
凄いとも思うし。
感謝もする。
でも。
やっぱり、ショックだった。
「なら、風邪薬飲んだっていいじゃん」
「だからー・・・マジで迷っているんだってば」
「でも、いらないと思うのなら、いいじゃない」
「怒るよ?」
とにかく、咳なんかで仕事が辛いのであれば、医者に行き、妊娠の可能性がある事を告げた上で薬を処方してもらうこと。
そして、明日中に検査をしてみること。
その結果をすぐにメールなり電話なりで、伝えること。
そう約束させられて。
「早く寝なさい?」
と言われて、切った。
眠れるはずなんかなくて。
こうして、パソコンの前にいる。
去年、赤ちゃんがだめになってしまって。
それはきっと、私のせいで。
あいつも充分悲しんで。
私は同じ間違いはしたくないと思い。
子供たちを引き取ってからは、なおさら慎重に避妊をして来た。
だけど、こう言うことになり。
まだ、妊娠したと決まったわけじゃないけれど。
決まったわけじゃないけれど。
「迷っている。困っている」
と言う、あいつの気持ちを聞いてしまった今は。
ショックで、悲しくて、どうしようもない。
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