さっき、夜の7時過ぎに、電話が来た。
仕事の帰りらしい。
「運転中の電話は、危ないよ?」
「大丈夫、イヤホン使ってるし」
「そか。どした?」
「実は、今日階段から落ちて怪我しちゃって」
「えぇ!?大丈夫なの?どこを、どうしちゃったの?」
「いや、そんな大騒ぎすることじゃないんだけど(笑)右の肘を捻挫と・・・」
「何?」
「ごめん、指輪、だめになっちゃうかも」
去年クリスマスに、お揃いで買った指輪。
階段から落ちたときに、右肘と左手でついたらしく、その時にどうやってなったのかは、彼も謎らしいけど、指輪が変形したらしい。
「戻りそうだけどね」
「いろいろやってみたんだよ、トンカチで叩いたり(笑)」
「だめだったんだ?」
「まず抜けない」
「抜けない??で、トンカチ?」
「自分の指を叩かないようにしながら、指輪だけ叩いたりしたんだけど。だめなんだよ。もう指に食い込んじゃっているし、切らなきゃいけないかも」
「それは、仕方ないよ」
「だから、ごめんなさい」
彼は、ここ最近の言い合いの事なんかで、罰が当たったと言う。
だから、指輪を切らなきゃいけない位に、歪んでしまったんだと。
「でも、もしかしたら、りりかの離れたく無いって言う意思表示を指輪がしてて、それで変形してまでも外れないのかも」
「罰でも、意思表示でも無いよ。不慮の事故だよ」
「違う。何か意味があるんだと思う」
「考えすぎだよ」
「いや。だから、やっぱり。ごめんなさい。許してください。俺は男なんだから、あなたを守らなきゃならないのに、自分に余裕が無いからって、当たってしまったり、本当に、本当にすみませんでした」
「・・・」
「黙らないでよ・・・ごめんなさいってば」
「うん、いや、そうじゃなくて。別にHだけが悪いわけじゃないし」
ずっと、引っかかっていて。
謝らなきゃならないのは、私だって思っていて。
思っていて。
なのに。
また、あいつから謝らせて。
あいつは、謝ってすっきりしたら、途端に肘の痛みがなくなった、なんて笑う。
こんなに、あなたを思ってくれる人は、どこ探したっていないよ。
いろいろな人に言われた言葉。
何回も聞いた言葉。
私が一番分かっているくせにね。
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