(昨日の続き)
「あなたは、私のどこが好きになったの?ねぇ、どこなの?」
あいつは、少し黙っていて。
それからゆっくり。
「性格と雰囲気」
って言った。
「その性格を、あなたは変えろって言ってるんだよ?おかしいよ。私、これでも結構あなたに譲歩して来たつもりなのに。これ以上は無理。譲れないもん」
「まるきり替えろって言ってない。確かに、さばさばしていて、男っぽいのはりりかのいい部分だとも思う。だけど、俺といる時だけでも、言葉に出して欲しいよ。俺といる時のりりかは、女の子になって欲しい」
私は、女の子なんて言う年齢じゃないし。
だいたい、可愛くなんて出来ない。
どうしたら、可愛く甘えられるのかなんて、本当に分からないし。
上手に、素直に、くっつくなんて事も出来ない。
話しているうちに、涙が出て来て。
「もう、潰れそうなんだよ。私はあなたが大好きなのに、それでも、もっともっと、今以上に愛して欲しいってあなたは言う。私が潰れたとしても、あなたはそれでも自分を愛して欲しいって言うんでしょ?今のままじゃ、私もあなたも、おかしくなっちゃうよ」
半分、叫びながら言った。
泣きながら怒鳴ったせいで、過呼吸になって、ハァハァした。
咳も止まらなくなった。
喉が、焼けたように痛くなった。
あいつも、泣きながら、私の背中をさすった。
私はその手を払って、泣いてばかりいた。
払われても、払われても、あいつは背中をさすって来た。
そして手を止めて。
「ものすごく熱い」
って言った。
自分でも、どんどん熱が上がってきているのは分かってた。
「平気」
って言っているのに、あいつは車をディスカウントショップに走らせて。
風邪薬と体温計を買って来た。
薬を飲んで、計ってみたら38度超えてた。
泣いていたせいで、余計に上がったんだろうけど。
帰ると言う私の意見なんか聞かずに、そのままホテルに入って。
抱えられるように部屋に連れて来られて。
ベッドに寝かせられた。
「一緒に寝たくない」
と言う私に、あいつは。
「最初から一緒に寝るつもりなんかないよ。ソファーで起きてるから」
と言った。
私はうとうとしつつも。
「やっぱり無理だよ」
とか言ったりした。
あいつは、しばらくそんな私の言葉に何も返答してこなかったけど。
何度か同じ事を繰り返す私の傍に来て。
「無理でも何でもいいから、今は早く寝て、元気になって」
と頭を撫でながら言った。
あいつの声が震えているから、顔を見たら、やっぱり泣いていて。
だから、私も泣いた。
「泣くと熱が上がっちゃうよ」
ってあいつは言いながら、やっぱり泣いてた。
私ばっかり、甘えていると思った。
考えてみたら、いつも私の変な意見を押し通して。
私は、この人に何もしてあげないのに。
自分はたくさんしてもらっているのに。
いつもいつも、合わせてもらっているのは、譲歩してもらっているのは、私の方なのに。
自分がしてくれって言われたら、してるじゃん!って怒るなんて。
そんな風に考えたら、私って最低だなぁなんて思えて来ちゃって。
泣きながら「ごめんなさい」を何度も言う。
「何がごめんなさいなの?」って聞かれても、やっぱり「ごめんなさい」って言う。
「おかしな事、俺も言い過ぎたよ。これがりりかなのにね。気持ちが見えたら、いいのにね。そしたら、俺もりりかも、不安になったりしないのにね」
・・・。
思った時に、少しずつ。
愛してるとか。
頑張っているねとか。
そういう事を言ってくれたらいいと思う。
言われたら、幸せな気持ちになれるんだから。
だから、恥ずかしいとか思わないで。
あいつは、ベッドに腰を掛けて、私の背中を撫でている。
私は、あいつに背中をむけて、サイドテーブルにあいつがおいてくれたウーロン茶を見ながら。
うん、って言った。
「少しずつ、歩み寄っていこう。不安になったりしないように」
もう一回、うんって言ってから。
「一緒に寝よう。風邪、移るかもしれないけど」
って言った。
あいつは、ベッドの中に入って来て。
私の向きを変えて。
私の頭を抱え込むようにして、背中をさすり続けてくれた。
凄く、心地よくて。
一番大事な事は、この人が大好きだと言うことだ、と思った。
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