仕事が終わると同時に、あいつから着信。
だめかな、だめかな?って思いながら電話に出た。
私の悪い癖。
いい事を考えるより、悪い事を考える。
悪い事を考えておいた方が、いい結果だった場合嬉しさが大きい。
逆だと・・・ものすごく凹むから。
「はい?」
「今終わったー。これから家に帰るから、つくのは七時半くらいかな。そっちは?」
「私も今終わった所。これから着替えて出るね」
何か、ドキドキする。
久しぶりすぎちゃって、ドキドキする。
会ったらこうしよう、ああしよう、この話をしよう、そして、話を聞かせてもらおう。
そんな風に、思いながら運転する。
3連休初日で道は混んでいたけど。
考えながら運転していたせいか。
あっという間に高速に乗って、あっという間についた気がする。
あいつの家まで迎えに行って、運転を替わってもらって、出かける。
「久しぶり」
頭を撫でられる。
久しぶりに酔うまでお酒を飲んだ。
咳が出ているから、あんまり飲んだらだめだよ、って言われてたのに。
安心しきって、どんどん飲んじゃった。
「今度会えるのはいつ?」
下が回らない状態で、私は聞いた。
「いつ、ってはっきり約束は出来ない・・・ごめんね」
「嫌!分からないの、いやだよ。寂しいのも嫌なの」
「ごめんって・・・」
「あなたの事が、こんなに好きじゃなかったら、こんなに寂しくならないのに・・・。どうやったら嫌いになれるんだろう。どうやったら、寂しくならないんだろう?」
「そんな風に言うなよ」
私は、泣いて抱きついた。
お酒の勢いもあって、ものすごく声をあげて泣いた。
強い振りするの、疲れたよ。
そう言って、泣いた。
あいつは、謝る変わりに。
「愛してる。りりか、愛してる」
って何度も言った。
私は、そう言われるたびに、強く抱きついて泣いた。
妹に。
「一緒に暮らしちゃえばいいのに」
って、よく言われる。
言うのは簡単だ。
実際、一緒に暮らそうと思えば、出来ない事もない。
こんな風に寂しくて泣いて、困らせて泣いて。
そう言うのなくなるんだから、一緒に暮らすのっていい点ばかりが見える。
なのに。
私に出来ないのは、何でだろう?
何で、一緒にいたいと思えているのに。
飛び込んで行けないんだろう?
何が引っかかるんだろう?
泣き止んでからも、しゃくりあげている私をソファーに座らせて。
自分は下に座って、私の腰の当たりに抱きついて来た。
ぎゅって私のお腹に顔をうずめて。
しゃくりあげながら、私が頭を撫でていたら。
お腹の所が暖かくなって。
あいつも泣いているんだって、気付いた。
寂しい思いしていたのは、りりかだけじゃない。
そう、言われている気がした。
だから、頭をぎゅって抱きしめた。
上から抱えるような感じで。
あいつは、おなかに顔をうずめたまま。
「忙しいのはずっと続くわけじゃない。こうして遠距離で我慢していられるのも、ずっとは続かないよ。早く、俺との生活の中に入って来てください」
うん、って言いたかったのに。
言葉が出なかった。
答えられなかった。
よく分からないんだけど。
私はこう言うとき、返事を出来なかった事の反省なのか、罪悪感なのか。
セックスをする方向へ持って行く。
私もソファーから降りて、下に座り。
自分からキスをする。
あいつとのセックスは。
ここを、こうして欲しい、ああして欲しい。
そんな事言わないでも、あいつは私がどうしたら感じるのか分かっていて。
感じすぎる怖さに、私が体を硬くしていても。
「大丈夫?力抜いてみて」
とか耳元で声をかけてくる。
私は、我慢している事が、気持ちいいのか苦痛なのか、分からなくなる。
頭の中がどんどん真っ白になって行って。
「もうだめだってば。お願いだから・・・おかしくなっちゃうから・・・」
「どんどんおかしくなっていいよ」
って、あいつのちょっと微笑を含んだ声を聞くと、意識が遠のいて行く。
こうしているときだけ。
私は、現実のいろいろな事とか、どうでもよくなる。
それが例え、「逃げ」と言うものだとしても。
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