march forward.
りりかの独り言。

2003年10月06日(月) 夜の闇

夕方から夜になる時が嫌い。

明るかった昼間から、だんだん空が赤みを帯びて。

夕方になってくるにしたがって、悲しくなる。

でも、夕方は嫌いじゃない。


子供の頃。

夕立が降ると、雷を怖がる私に。

祖母は「寝なさい。起きたら止んでいるから」と優しい声で言った。

私はいつもその通りにして。

目が覚めると、雷も雨もおさまっていたけど。

変わりに、暗い夜が来ている事があって。

それが、物凄く怖くて仕方なかった。

違う世界に来てしまったような。

凄く怖い世界に来てしまったような。

そんな感覚になるから。



あいつに、付き合ったばかりの頃。

・・・もしかしたら、付き合う前だったかもしれない。

「私、お昼寝していて、起きた時に夜だったりするのが嫌いなの」

と、メールした事があった。

「なんだか、怖くなって。子供みたいでしょ」

「そんな事ないですよ。なら、夜になる前に起こしますよ」

「じゃ、頼んだよ(笑)」

そんなやり取りを、いつまでもいつまでも、覚えているあいつ。



「起きてください、そろそろ暗くなって来ました」

そんなメールが来たりするようになった。

「何で寝ていたって分かったの?」

「3時くらいからぱったりメールの返事が来なくなったから(笑)」

「そぉか。ありがとね」



最近は、私もお昼寝できる身分じゃなくなり。

昼間は働いているか、用事があって出かけているか、資格の学校に行っているか。

だから、そんな事もホントなくて。


この間。

喘息が辛くて、用事をキャンセルして家にいたとき。

喘息が辛いから、用事をキャンセルしたと言う事だけは伝えてあったんだけど。

昼間メールのやり取り何か、今じゃあいつも働いているから出来ない。

なのに。

夕方、電話が来て。

「寝てたでしょ。もう5時だよ」

「寝てた・・・けど、今電話して平気なの?」

「今、運転中だったから。たぶん家にいるし寝ているんだろうなぁって思って。暗くなる前に起こさなきゃって思ったんだ」

「そか。何か凄く懐かしい」

「何が?」

「こうやって、メールや電話で、暗くなる前によく起こしてくれたなぁって」

「そうだねー」



私は何度も「懐かしい」を連発した。

あの頃は、よかった、というニュアンスを含んでいたのかもしれない。


すごく、真剣に、本気に、何もかも見えない位に、彼だけの事を考え。

今だって真剣だし本気だけど。

見えない位に、ではなくて。

ちゃんと、周りも見えていて。

余裕も、ちょっとはあると思う。

冷静に、色々な事を考えられて。

感情的になって、物事を決めるわけではなくて。



いい事なのに。

いい事なんだけど。

あの頃の方が、よかったと思えてしまうのは、何でだろう。

今だって、一番好きなのは、あいつだし。

あいつだって、そう思ってくれているって分かっているのに。

私は何が不満なんだろう。

何に対して、何と比べてあの時はよかったと思ってしまうんだろう。




咳が止まらないし、体もだるいから。

仕事の帰りに病院(救急外来の時間だったけど)へ行った。

風邪薬をもらって来て。

夕飯(と呼べる物じゃないかもしれないけど)を食べたあと。

薬を飲んで、お風呂に入ったら、急に眠気が襲ってきた。

髪も乾かさないで、そのまま寝てしまい。

あいつからの着信でさっき目が覚めた。


「寝てた?」

「んー・・・あぁ、髪の毛ぐちゃぐちゃだー・・・」

「風邪平気?」

「うん、明日もう一度、朝一で行く」

「そか、起こしちゃって悪かったね」

「いいよ、声聞きたかったし」


寝起きの私は素直だ、とあいつはよく言う。

だから、起こすのが苦じゃないんだと。

逆に素直な私の気持ちを聞けるチャンスなんだって。


少し話してから「じゃ、ゆっくり寝てね」って言われて電話を切った。

一度冴えてしまった目は、なかなか閉じなくて。

仕方ないから、起きてみた。


レースのカーテンしか閉めてなかったから。

夜の外がよく見える。


考えてみたら。

一人が嫌いだったくせに、今じゃ何だか平気だし。

昔より、暗いのが怖くない。


こう言うのも、慣れるもんなんだ。


もうすぐ、ここに来て一年になる。


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