朝早くに、あいつが来た。
「朝ご飯は?」
「食べた」
2人でだらだら話して、寝転がって。
あたしは昨日、遅かったから。
あいつも早起きしたせいで。
気付いたら、本当に寝ていた。
一緒にお昼寝なんか、余りした事なかったから、なんとなく新鮮だった。
お昼過ぎに起きて、遅い昼ごはんを食べているとき、あいつの携帯に着信。
「?出ないの?」
画面を見たまま、出ないあいつに声をかける。
「いや、うん・・・」
あいつの返事にピンと来た。
あ、元彼女だ。
「切れちゃうよ・・・?」
「うんー」
昼ごはんを食べながらテレビ見て。
全く気にしてない素振りをしつつも。
しっかり耳はあいつの声に釘付け。
「もしもし、はい、お久しぶりです。ハイ・・・」
「え?何で?」
「てか、意味分からない」
「ああー、無理無理」
「うん、頑張ってね」
こんな感じで、切ってた。
3分話してないんじゃないかなぁ。
あたしには、ものすごく長く感じたけど。
でもって。
何が意味分からないの?
何が無理なの?
なに?
凄く気にしまくっているくせに、なかなか聞けなくて。
電話終わったあと、普通にご飯を食べだしたあいつを、ちらちら見ちゃった。
「気になる?」
凄く、不敵な笑みをしつつ、言ってきた。
「そりゃ、少しは」
「少しじゃなくせに」
「少しでも何でもいいじゃん。なんだって?」
「あのね・・・」
実家の住所と電話番号を教えて、と言われたらしい。
看護婦を辞めて、今はなんかのセールスの仕事をしているらしく。
それで、とにかくノルマを集めるために、知り合いの住所とかを片っ端から聞いている、とか言うことだった。
「そんな、訳の分からないセールスに教えるはずないじゃんなー」
「んー。何のセールスなんだろ?」
「知らない」
「ねぇねぇ、ちょっとがっかり?」
「何が?」
「電話の内容が、そんなんで。復活したいとかそう言う話じゃなくて」
「まぁ、がっかりと言えば、がっかりかな」
「・・・」
「だって、考えてもみなよ。昔とは言え、一応付き合った人間に、仕事のノルマのためだけに電話して来るんだよ?俺ってどんなんと付き合ってたんだ?って話になるじゃん。それは、がっかりと言うか、ショックと言うか(笑)」
でも、元彼女も、なんだって、元彼になんかそんなの頼むんだろう。
友達とか全部使い果たしちゃったのかな?
てか、ノルマ平気なのかな?
でもでも。
まだあいつの電話番号を消去してないって事なんだよね。
そして、彼女の携帯の番号が、あいつの携帯に残ったって事だし・・・。
それはそれで・・・ちょっと引っかかるけど。
「妬いてた?」
ニヤニヤしてあいつが聞くから。
「信用しているから、妬かない」
って真顔で返してみた。
大嘘だけど。
信用と焼きもちってまた違う気もするし。
「全っ然!妬かない」
念を押してみたくて、もう一度言ってみた。
「そかそか」
嘘ってばれてたかな。
やっぱりニヤニヤしながら。
よしよしされたから。
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