あいつは、今日は久しぶりの休みだし、お墓参りに行くと言って。
午前中のうちに帰って行った。
あたしも、帰宅して掃除して。
いいお天気で。
気持ちのいい青空の中。
携帯の着信音。
聞き慣れない音だと思ってたら。
元だんな様から。
他愛のない話をしてて。
「りりか、来月誕生日だろ。何欲しい?」
あたしは、びっくり。
貰えるはずないじゃん。
そんな風に、誕生日プレゼントの事をいきなりだされるなんて、思ってなかった。
「いらないよ。欲しいものとかないよ」
「そか。なら、来月半ば。ディズニーシー行かない?」
「??はぁ?」
「子供たちと5人で、行かない?」
「・・・」
即答で「行く」って言いたい。
けど、なかなか、言葉が出なかった。
喉に、何か詰まったみたいに。
言葉が、なかなか出てこなかった。
「行かない?」
もう一度聞かれた。
あたしは。
「行って・・・いいの?」
と、逆に聞き返した。
「誕生日だしね。いいよ。俺からのプレゼントって事で」
「ほんと・・・?会えるんだ・・・」
「うん、いいよ」
無意識に涙が出た。
夢じゃないんだよね・・・。
何度も「夢じゃないんだよね」を繰り返してた気がする。
あいつに、話したかった。
メールじゃなくて、言葉で。
あいつは、お墓参りに行っているから。
終わったら電話して、とメール入れて。
あたしは、電話を待った。
夕方。
電話が来た。
あたしは、すぐ、話そうと思ったんだけど。
あいつが嬉しそうに「聞いて聞いて」を連発するから。
先に、あいつの話を聞こうって思って。
「あのね。新しい車の運転、今日一日したんだよ。だいぶ慣れたんだよ」
「よかったねー」
「それで、やっぱり最初に助手席に乗せるのは、りりかがいいんだよ」
「うん、ありがと」
「だからね、練習もずっと一人でやってたの。もう、それこそ親も乗せないいきおい(笑)」
「(笑)そんなの気持ちだけでいいのにー」
「でー!オヤジにね、来月りりかの誕生日だから、休みを貰いたいって言ったんだよ。半ば位なら、いいよって言われて。あ、もちろん、りりかの誕生日は休みじゃなくても会いに行くけど」
なんとなく、嫌な予感がした。
「それで、来月半ば。一年ぶりに、ディズニーシーに行こう!ね!!」
「・・・」
的中した、と思った。
前々から、1年経つし、行きたいねと言う会話は出てた。
けど、半ば、なんて。
同じ頃じゃん・・・。
「その時に新しい車で行くから。りりか、横に乗ってね」
「あ・・・うん」
「嬉しくないのー?」
「嬉しいよ!」
嬉しいよ・・・。
けど、もう今更、「子供たちと一緒にディズニーシーに行く」なんて言えなくなってしまった。
言わなきゃいいのかもしれないんだけど・・・。
でも、いいたかった・・・。
たぶん、言ったら。
あいつは「じゃ、今回は辞めよう」って言うと思う。
違う所に行こうか、とか。
でも。
せっかく、あいつも楽しみにしてくれているのに、言えない。
日にちだけは、絶対にずらさなきゃ・・・。
「で、りりかの話って何?」
「あ、うん。えっと・・・何だっけなぁ(笑)」
「何何ー?気になるなぁ。なんだよー?」
何か、適当にごまかしたけど、覚えてない。
こんな偶然が、あるなんて。
軽く言えばいいのかもしれない。
「ディズニーシーには、子供たちと行ける事になったから」
って。
けど、言える?
あいつは怒らないだろうし、むしろ喜んでくれるかもしれないけど。
けど、あいつだって傷つくんだ。
元だんな様も一緒、って分かったら。
あいつだって、寂しい思いするんだ・・・。
そう考えたら。
言えないよ、やっぱ。
子供たちと会うのは、もう半年以上ぶり。
ライラには会っているけど。
凄く嬉しい。
まだまだ先の話だと思っていたから。
でも、こんな偶然って、あるの?
あいつと行くのだって、もちろん、楽しみだし。
あたしが、黙っていれば済む話なんだ。
そう思う。
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