あいつが、今もあたしのそばにいてくれるのは。
離婚させて一人にさせた罪悪感。
子供まで取られちゃって、一人になってしまったあたしへの責任感。
あたしへの、愛と言う感情は全くなく。
あたしも、寂しさと言う感情だけで、愛はなく。
違う感情を持ってるのに、それを見ない振りして続けている二人。
見ない振り・・・じゃない。
感情を履き違えてる。
確かに、離婚の引き金にはなった。
けど、うちはもうどっちにしても、終わってた。
元だんな様の浮気のメールを見つけた去年の初夏。
あんなにあたしが冷静でいられたのも。
あいつのおかげだったし。
もし、いなかったら。
おかしくなっていただろうな・・・
あたしが、「生理がずっと来ないで、体が変だ」と言ってた時期に。
あの人は、女の人と公園でデートって。
あたしがもし。
あのとき、あいつと付き合ってなくて、普通に主婦だったら。
あたし、おかしくなってただろうな・・・。
ただでさえ、体が変だったから、精神的に参ってたときだったし。
もしかしたら。
あの時あいつと付き合っていなかったら。
去年の初夏。
あのメールを発見した時に。
別居してたかもしれない、と思ったりするときもある。
最悪離婚まで行ってたかもしれない、と。
今日は、あいつは残業と言う電話が来た。
何時に帰ってくるのかなぁ。
って、パソコンでお友達とメッセをしながら、待つ。
いろいろな事があった一日で。
凄く疲れてた。
だから、声を聞きたいって、ずっと思ってた。
けど。
残業だもん・・・
仕方ないよね。
前ならリアルタイムで話せたのになぁ。
とか、また、考え始めちゃう。
だめだね、うん。
夜12時半。
「今帰宅ー・・・」
ってメールが来た。
「明日も早いの?」
「明日は6時起き」
「そか。なら早く寝なきゃね」
「うん、でもりりかのお休み聞いてから寝るよ」
で、1時に電話が来た。
「お疲れさま。大変だったね」
「うん。でも、りりかも明日は朝から夜中まででしょ?りりかも大変だー」
「うん・・・疲れちゃう」
「どうした?何か声が暗いけど。疲れてるの?」
「うん、今日はいろいろあってね。疲れちゃった」
「どうした?何で疲れたの?言ってみなよ」
「もう、寝なきゃだよ。明日6時でしょ?今度でいいよ」
「いやいや。そんな今度じゃなくて、ちゃんと今聞かせて」
それで。
お言葉に甘えて。
仕事の愚痴と、今日あった嫌な事。
話した。
「ぶっちゃけね。責任感はあるよ。りりかを幸せにしなきゃって、責任感。けど、愛情が伴ってなきゃ、責任感って出てこないと思わない?」
「うん・・・あたしも愛情、あるもん」
「だよね。俺もありすぎるくらい、あるよ。もう、気にするな。そんな事。安心してよ」
「んー・・・」
あたしが、生返事したら。
「あのね、日曜日、休みになるかもしれない」
「え?」
「今度の日曜。だから、そしたら行くから、一緒にビデオ見よ?」
今日、「美女か野獣」を撮っておいてって言われてたから。
「ホントに?」
「あ、でも、まだ予定だから分からないよ?だから言いたくなかったんだけど。だめになった場合、りりか落ち込むから・・・」
「でも、来れるかもしれないんだよね?」
「うん、余り期待はしないで。でも、りりか何か暗いから、明るいニュースを、と思って」
「うん、嬉しい。ありがと」
次に会えるのは、4月だと思ってたから。
びっくりして。
嬉しくて。
元々4月まで無理だって思っていたから。
もし、だめになっても、諦めつくよ。
だけど。
「4月まで会えない」が「今度の日曜に会えるかもしれない」に、ランクアップしただけで、嬉しいし。
その、嬉しい気持ちだけで、今は充分だし。
「ね、もう、2時近いよ・・・寝て。あたしはもう、平気だから」
「うん、そうだね、そろそろ寝なきゃね。りりか、いつもの」
「愛してる」
「どれくらい?」
「たくさん」
「うん!ありがと!俺も愛してるよ。たくさん、いっぱー・・・」
「コップ倒さないようにね」
「あ。はい・・・(笑)」
おやすみ。
自分の気持ちは、自分にしか分からないし。
あたしたちしか分からない事も。
たくさん、あるよね。
あたしは、あなたが好きで。
ずっと一緒にいたい、と思うよ。
それは、寂しさとかじゃなくて。
素直に、あなたを好きだから。
寂しいから、と言う理由だけだったら。
あたしたちが、遠距離になるときに。
あたしはついて行ったと思うし。
または。
別れてたと思うし。
不安はたくさんあったけど。
離れていても大丈夫だって、あたしの気持ちも、あいつの気持ちも、平気だって。
思えたからで。
時期が来たら。
あたしは、あいつの所に行くと思う。
その、「時期」が来た時は。
きっと、一番あたしが幸せだと思える形で。
幸せだと思う気持ちで、行くんだと思ってる。
今はまだ。
準備が出来てないんだよね。
気持ちとか。
いろいろな、準備。
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