march forward.
りりかの独り言。

2003年02月14日(金) 大きな手

マフラー間に合わないかも!

あたしが昨日、そう言ったら。

「がんばれー。短くても、りりかが忙しい合間に頑張って作ってくれたんだって、思うと嬉しいよ」

って言ってくれてたけど。

頑張って最後までやり遂げたくて。

必死。


あいつは家に仕事から帰ってくるのが6時半くらいだから、着替えていろいろして、7時半には出て、こっちにつくのは九時半くらいかな、とか言ってた。

もう、あたしは暇さえあれば、マフラーを編んでた。

ああ・・・難しい縄編みとかにしなければよかった・・・。




夕方五時過ぎ。

ようやく完成!

最後は角四箇所に小さいボタンを付けてみた。

飾りとして。




自分でもなかなかの出来栄え!

と思ってたら、あいつからメール。

ナイスタイミングだよーなんて心の中で言いながら、メールを見る。



「今から家に向かいます。今日は現場が遠かったので、つくのは二時間後くらい。で、朝からだるくて、関節痛くて、頭が痛い。熱がある・・・」


・・・。

は?

朝は普通に「おはようー。いい天気だね。行って来ます」ってメール来てたよ?

昼休みはいつもみたいにメールがなかったけど・・・具合悪かったから???



「えぇー?大丈夫なの?平気なの???無理しないで、だめなら来れなくていいから!」

「いや・・・行くよ。会いたいし」

「だめだよ、運転危ないよ!」

「なら、高速だけ乗っていくから、降りる○○インターまで来て。そこで会おうよ」

「だめだって!・・・あたしが行く!」

「だめ。高速危ない」

「平気!」

「だめだよ!とにかく、まだ家に着いてないから、ちょっと待ってて!」



待てるはずないもん。

あたしはどんどん用意して、強行突破。

さー、高速乗るぞー。

ナビにもあいつの家の住所で設定したし!

意気込み充分!

・・・てか、あたしは高速の運転は免許取得から八年目にして、まだ三回。

その三回とも全部、誰かが隣にいて「はい、合流OK」とか言ってくれてた・・・

しかも、三回中一回は教習所のときだし・・・。




「今家を出ました」

「○○インターで待ち合わせでしょ?まだでないでいいよ」

「ううん、Hのとこまで行くの」

「は?危ないからだめって言ったでしょ!」

「平気。もう出ちゃったもん!」

「・・・なら○○インターで待ってて。家ついたらすぐ向かうから」

「やあだ。向かうころあたしは高速です」

「・・・。絶対に安全運転ね!!!!!」

「任せて♪」




なんて言ったけど・・・。

実は心臓は破裂しそうなほど、ドッキドキ。

指先はどんどん冷たくなってくるし・・・。

高速乗る前にとにかく落ち着こうと思って、お茶とフリスクを買った。




家を出たのは七時。

高速を飛ばしたせいか(怖くて早く降りたい一心で飛ばしました・・・)下道が混んでいたにもかかわらず、九時ちょっと過ぎに到着。


「降りたよ。今ね、○○って交差点」

「あー、もう後五分くらいで俺んちだ。早かったね」

「うん、140キロくらいで来たの」

「・・・会ったら説教だから」




こういうとこに住んでるんだー。

こういうとこで小さいころから過ごしたんだね・・・。

真っ暗で、星だけが綺麗に見えて。

本当に、田舎って言う感じで。

バックミラー見ても、真っ暗で何も見えないの・・・。

車のライトを消したら、暗闇。

そんなとこ。

あたしが住んでいるとこでは、考えられないくらいの静けさで。




あいつが前から歩いてくるのが見えた。

10日ぶりの、あいつ。

当たり前だけど、変わってない。




「親父が、家に連れてこいよ、って言ってた」

「いつかね」



なんか、たった十日なのに。

恥ずかしいって言うか、なんか、そわそわしちゃう。



「疲れた?」

「うん、すごく。高速一人で乗ったの初めてなの。熱は平気?」

「帰って計ったら37.8度」

「なら、会わないで寝ていたほうがよかったんじゃないの?」

「やだ。そしたらふてくされてた」

「頑張って、来た甲斐があったかな」



あたしがちょっと笑ってたら。

「ありがとね・・・。ホントに」

頭をなでてきた。

「嬉しいよ、マジで」





明日はあいつはお姉さんの結婚式。

全く寝ないで出すわけにも行かない。

熱もあるんだし。

あたしも疲れてて、早く運転をやめたかった。

コンビニでお茶を買う。

それで、あいつが運転を変わってくれた。

少しだけだからね。

そのまんま、あいつの運転でホテルに行った。

てか、何であんなにいっぱいホテルがあるの?って聞いたら、「田舎だからやることなくて、みんなホテルに行くからだよ」とか言ってたけど・・・違うでしょ。





ホテルについて、改めておでこを触ったら、かなり熱い。

「平気ー?」

「平気平気。風呂に入ってないから、入りたい」

「えー?熱あるときはだめだよ!」

「いや、昨日もだるくて入ってなかったんだよ・・・。りりかも来てくれたしね」

「いいって、あたしは気にしないから!(何もしないんだし)」

「やだ、入りたいの」




あいつは、お風呂を溜めてた。

その間に、あたしはチョコとマフラーを渡す。

「チョコなんか食べられないよね?」

「うーん・・・一個だけは食べるよ」

あたしが作ったのは、生チョコ。

一個が1.5センチ四方くらいの四角のを9個入れてみた。

「おいしい。うん、甘すぎないし、おいしいよ」

「マフラーは?」

「そうだ、マフラー!」

もうね、大はしゃぎ。

「すげー、マジで作ったの?売ってるのと変わらないじゃん!!手編みなんてしょぼい物かと思ってたよ!!!すっげー・・・」

「頑張ってみました」

実は、飾りで付けたボタンの裏には、メッセージ入り。

四個とも違う文面。

言うのやめようと思ってたんだけど、つい言っちゃった。

「ねぇ、ボタンにね、メッセージが書いてあるの」

「え?何も書いてないけど?」

「裏だよ!」

「このボタンはどこに留めるの?」

「飾り!!!!」

「あ、そか」



メッセージは。(「」はあいつの感想です。)


『HAVE A GOOD TIME』

「これなんて意味?」

『頑張ってね』

「何を?」

『いつまでも一緒にいようね』

「当たり前じゃん」

『I LOVE YOU』

「知ってる♪」




嬉しそうに、部屋の中なのに、ずっと巻いてた。

あたしが「汚れちゃうよ?」って言ったら、ようやくはずした。

「明日の姉ちゃんの結婚式にも付けて行くんだ。で、姉ちゃんには出来ないだろー?って自慢するんだー」

ホント、大喜びしてくれて、よかった。




お風呂は、あたしは家で入ってきたから、入らないって言った。

でも、せっかく一緒に入れるんだから・・・って強い押しに負けて、あたしはバスタオルを巻いて入る事に。

お風呂の中で、キスした。

すっごく久しぶり。

10日だけなんだけど。




もう12時近くなっていたし、寝よっか。って話になって。




一緒にベットに入った。

あいつのおでこを触ったら、やっぱり熱いし。

あたしはタオルを冷やしてきて、おでこに乗せた。

「気持ちいいー」っていいながら、寝ちゃった。

でも、タオルがずれてきて、肩に当たってたりするから、逆効果だな、と思ってはずして。

あたしの手をタオルで冷やして、おでこに乗せてた。



あいつの手を、握ってみた。

大きい手。

男なのに、綺麗な手だった。

でも、今は外で働くからかな。

荒れてて、爪とかも汚かったりする。


でも、大好き。

この手が、大好き。



ずっと手を握って、ずっと手を見てた。

寝るのが、惜しいから。

あたしがぎゅって握ると、寝てるくせに握り返してくる。

あたしがおでこを冷やす用に、自分の手を冷やそうと思って起き上がると、寝てるくせに慌てて抱きしめてこようとする。


いなくならないよ・・・。

平気だよ。

君が目覚めるまで、あたしはここにいるよ。




そんな風に思いながら、手を握ってみた。

やっぱり、握り返してくる。

無意識なんだね。







この大きな手で、あたしはどんなに癒されたか。

たくさんの事を教わったんだよね。

たくさんの物を貰ったんだよね。

それは、形が見えないものだったり、見えるものだったりする。

あたしの手は、小さい。

あたしの小さな手で、あなたに何かを教えてあげられた?

あなたに何かを与えたのかな?





愛してる。

心からそう思った。


ずっと、あなただけだよ。

本当に、そう思う。


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