仕事で嫌な事があった。
いつもいつも、そう言う事を、彼に話してきた。
一度は同じ職場で働いていたから、あたしのいう事も分かる、分かってくれていると思ってた。
「今日の夕飯が最悪だったんだよー。もう、半切れしたよ」
って会話から始まった。
仕事で疲れて帰ってきているのに、食事がお粗末だったと言いたいらしい。
「でも、たまにはそういう日もあるんじゃない?」
あいつの家はお母さんも働いてて、家事は全般的におばあちゃんがやっているらしいんだけど。
そのおばあちゃんが畑の草取りに昼間出掛けて、疲れたから食事が手抜きだった、と言う。
「んな、草むしりなんかいいんだよー、食事だけ作ってくれよ、って思ったよ!こっちの仕事は大変なんだからさー」
確かに、あいつの仕事は大変だと思う。
外での仕事だし、力仕事だし。
けど、たまにはそういう日もあると思う。
専業主婦だったとしたって、そう言う日ってあるよ。
「りりかの料理が恋しくなったよー。早く作りに来てよー。一緒になったら毎日りりかの料理食べられるんだなぁ。待ち遠しいよー」
「あたしは、ずっと働くつもりだし・・・。家事は完璧に出来ないかもしれないよ?今日のおばあちゃんみたいに、あたしも手抜きの食事とか出すと思うもん」
って話から。
「あのさー、りりかの仕事(飲食店)と俺の仕事(ガテン系?)どっちが疲れると思ってるの?疲れ具合が違うんだよ」
って言われた。
「あたしだって、疲れるよ。愚痴だってあるし・・・聞いて欲しいし。いろいろあるよ」
「所詮、あんなのバイトに毛が生えたみたいなもんじゃん。気楽じゃんよ」
悲しくなった。
なんでだろ?
なんで、そんな風に言うんだろう?
気楽?
全然、そんな事ない。
胃が、きりきりした。
話したかった事、一言も言えなくなった。
所詮、バイトに毛が生えた・・・気楽。
そんな風に言われたら、何だか言えなくなったよ。
あいつの仕事が大変だって、あたしも理解してる。
元だんな様と同じ職種だったから。
だんな様も朝早くから、夜暗くなるまで、寒くても暑くても、真っ黒になって帰ってきてた。
知ってるよ。分かってるつもりだよ。
元だんな様も、あたしの仕事なんか、全然楽だって言ってた。
専業主婦のときは、もっともっと言われた。
3食昼寝つき。
古い言い型だけど、そんな感じで言われてた。
だから、仕事を始めるとき。
「家事を手抜きするなよな」
「お前の仕事なんか、楽なんだから、今までと同じだけ家事もしろよ。あと、疲れたとか言うなよな」
って言われてた。
それが、あたしが仕事をする条件だった。
あたしは、「家庭」「専業主婦」って言う型の中に納まっているのが嫌で、そんな条件は飲んだ。
だから、愚痴とか言えなかった。
疲れたって事を言わない条件だったから、愚痴は言えなかった。
元だんな様も、仕事の愚痴は言わない人だった。
でも、思った事とか嫌だったこととか、逆に嬉しい事もね。
今までは言えていたあいつに。
そんな風に言われちゃったら。
なんだか・・・言えなくなっちゃった。
元だんな様とかぶったのかな。
あたしは強がりだって、認める。
だから、職場で愚痴とか、言えない。
一番上に立っているあたしが、愚痴なんか言ったらだめだって思って。
でも、どこかで出さなきゃ、溜まって爆発しちゃうでしょ?
あたしは、あいつに吐き出す事で、溜めないでここまで来れた。
なんだか、寂しいね。
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