今日は、会う約束してて。
でも、仕事が長くなってしまって、約束より遅くなっちゃって。
ホントは、あいつの家で最後に手料理食べたいって言われてて、作る予定だったんだけど。
「こんな時間じゃ、もう買い物行って作って食べるころには10時過ぎちゃうからいいよ」
「ごめん・・・」
「いいよ、いいよ。遅くなるって連絡もらったから、俺が焼きそば作ろうと思って、材料買ってきたから。食べる?」
「うーん、余りおなか空いてないけど・・・。Hは?」
「俺は夕方ちょっと前に食ったから、減ってないかな」
「なら、まだいいかなー。ありがとね」
ほら。
素直に、ありがとうも出ちゃう。
「飲む?」
あいつがワインを出した。
「うん」
二人で飲む。
なんだかね、飲んでも酔えなかったりする。
あたしが、ボーっとテレビ見てたら。
いつもみたいに、あたしの後ろに座る。
ドキッとする。
なんでだろう・・・。
すごく、ドキッとする。
いつもみたいに、頭をなでてきて。
後ろから抱きしめられたりするんだけど。
あたしは、悲しくなってしまう。
「本当に、あたしが好きだから、こうするの?今だけ?ここにいる間だけのためにこうするの?」
そんな風に、勘ぐってしまう。
でもね、もしそう思うなら、それでいいよ、って思ったりもする。
あなたが、優しすぎて、あたしにそう言えないのであれば。
あたしから言おうか?
「今月いっぱいで、終わりにしよっか」
て、言おうか?
でも・・・。
それは、逃げている事に値する。
あたしが、こうして一緒にいる事が苦しいから。
だから、逃げたいのかもしれない。
何より。
先に別れを切り出したいのかもしれない。
言われる辛さは、嫌って言うほど分かったから。
そんなあたしの変化を気づいたのかなぁ。
「ごめんね、この間は」
「んー?」
「いっぱい、泣かせちゃったし。嫌な事言っちゃったし」
「うん・・・あたしが悪いんだしね」
「ほんと、ごめんね」
こんな言葉だけで、あたしは胸を捕まれたみたいに、悲しくなってしまう。
ごめんね、って言葉を。
うまく信じられない。
「大好き」
そういう気持ちが、薄れていっているのかなぁ。
とか、思ってしまう。
きっと、自分が好きだったら。
自分も大好きだったら。
相手が言う「好き」も信じられると思うんだ。
だけど、ちゃんと思ってないから。
信じられなくなっちゃったのかなぁ。
「今月いっぱいにしよっか」
「何が?」
突然、あたしは言う。
「あたしたちが付き合っているの、今月で終わりにしようか?」
「何言ってるの・・?」
「そう思ったのかと思った」
「は?」
「違うな。そう思ってるのかと、思ってる」
「思ってる?誰が?俺が?」
「うん、そう」
「ばかじゃねーの?」
「信じ切れなくなってるの。前みたいにね。愛されている自信とかないの」
あの、「お別れ」って言ったときの、あなたの表情・声・動作。
そういうのが、引っかかる。
消えない。
あれは、単にふてくされてた、とかじゃなかったから。
本気で、そう思ってた顔だったよ、声だったよ。
「もう、ほんとに・・・ごめん」
ぎゅって、抱きしめられる。
「そんな風にいわないでよ・・・本当に」
「あたしが、ついて行けない人で、ごめんね。だから、勝手にそうやって勘ぐっちゃうんだね・・・」
「そういうので、あの時別れようって言った訳じゃないよ」
「うん・・・」
「今は、元通りにりりかが好きだし。愛しているし。一生、一緒にいたいと思ってるよ・・・」
昨日。
友達に言われた。
「一瞬でもりりかの手を離そうとした人間だよ?その人はまた離すかもしれないって思いながら、掴んでいくの?」
そう。
一瞬でも、離した人。
だからか。
あたしが、今。
この人の言葉を心から信じられなくなっているのは。
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