夕方、「店の駐車場についています」ってメールが来てた。
着替えてすぐに出て行く。
「早かったねー」
「向こうを午前中に出てきたんだよ。で、家に帰って掃除とかして来た」
「そか」
「まー、のって。今日は俺のプランね!」
「今日も、でしょ?」
「いやー、なんだかんだ言って、いつもりりかのペースになってるからなぁ」
「そお?」
「うん!!」
いきなり高速に乗る。
「何?どこ行くの???」
「ミレナリオだよ」
「車で???しかも大晦日だし、混んでるって」
「どっか近くの駐車場に停めて、後は電車。混んでても仕方ないの」
天気予報は夜から雪だった。
だから、帰りにいっぱい降ってたらどうしよう・・・とか考えちゃうと・・・。
「大丈夫だって!」
あいつはやっぱり、楽天家・・。
新橋に車を停めて、電車で移動。
「どれくらい並ぶんだろう・・・」
「一時間くらいらしいよ?」
「えぇー・・・」
「えー。とか言わないの!」
寒いのが苦手なあたし。
でも、人ごみのせいか、寒くない。
あいつはむしろ暑いっていってるし・・・。
「でも手が冷たいんだよね、りりかは」
あたしの手を自分のポケットに入れる。
並んでいる間、いろいろな話をしてくれた。
あたしが飽き無いように、いっぱい話してくれた。
あたしが仕事の事とか、話し出しても、ずっと笑顔で聞いてくれてる。
こんな話つまんないよね、ごめん。
ってあたしが言うと。
りりかといてつまんないことはないよ。
って言ってくれる。
そんだけの事が、凄く嬉しかったりする。
こいつが好きだなぁって思い知らされる。
もう、一年も一緒にいるのに、ずっと変わらず。
違うな。
一年前以上にいっぱいあたしに愛情を注いでくれる。
ミレナリオは凄く綺麗で。
でも、遠目から見たほうが綺麗で。
中に入ってももちろん綺麗だけど、骨組みとか見えちゃうせいかな?
遠くからの方が綺麗だね、って。
二人で話してた。
雪は降ってこなくて。
無事に車で帰って来れた。
「お腹空いたなぁ」
「俺も空いた!」
「何食べる?」
「年越しそばでしょ」
「あたし、そば余り好きじゃない・・・」
「ならうどん!」
「うんー。いいけどおなか空いたよー」
「・・・。分かった。そこ入ろう」
入ったのはパスタのお店。
「麺には違いないし!」
「いいの?うどんじゃなくて?」
「だって、りりかお腹空いたでしょ?」
「うどん屋さんを探すくらい我慢できたよー?」
「いいよいいよ。我慢することないじゃん。パスタでいいよね。俺も実家にずっといたからパスタなんて物出ないしさー」
あたしがパスタ好きなの知ってて。
こうやってちょっとずつ気を使ってくれるんだよね。
その後はドライブしてたんだけど。
あたしは寝ちゃって。
起きたら全然知らないところを走ってて。
「どこ行くの?」
「今日はホテルにお泊まりです」
「え?」
「一緒に夜景見よ。年越ししながら」
「え????」
「大丈夫、このシャンプーやだーとか言うと思って、ちゃんと持参済みだから」
「そんな問題じゃないんですけど・・?」
「いいじゃん、予約も取ってあったんだー」
あたしが泊まった事のないような高層ホテルで。
高そうで・・・。
頑張っちゃったな、こいつ・・・って思った。
部屋の窓が大きくて。
夜景が見えて。
すごく、すごく綺麗で。
ワインサービスまであって。
部屋から見えた大きな電子時計がカウントダウンを始めてた。
ゆっくり、あたしからくっついた。
あいつの首に腕を回した。
目が合って、びっくりした顔されたけど。
すぐに笑顔に戻って。
あたしの大好きな、無邪気な笑顔に戻って。
頭をなでて、髪をなでて。
キスをしてくれた。
どこかで花火が上がった。
目を閉じていたから見えなかったけど。
音がした。
新しい年になったんだなって思った。
大好きな人と一緒に、新しい年を迎えたんだなって。
目を閉じたまま、思った。
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