仕事、今日は休めないから行った。
あざは化粧して隠した。
でも、全然違和感あるし。
口のはじは、かさぶたみたいになってるし。
だから、大きく口を開けることとか出来ないし。
やっぱり、みんなに「どうしたの???」と言われた。
「転んだの」
ありきたりな嘘。
たぶん、ばれてるよね・・・
いつもどおりに仕事をこなして行く。
休憩中。仲良しの主婦Mさんに、言われる。
「それって、殴られたんじゃない?まさか・・H君?」
「まさか!」
「ねぇ、りりか、私には言ってよ」
なんだろ。
安心しちゃったのかな。
誰かに話せるって事とかに。
あたしは、泣きながら、話した。
彼女は。
「どんな理由にしても、男が女を殴るのは、私は許せないなぁ」
と言って、
「それを今日まで一人で抱え込んだ、りりかの事、怒りを通り越して呆れちゃったよ」
と、寂しそうに言われた。
彼女とあたしは。
最初はバイトとして。
彼女の方が2ヶ月ほど後に入っただけで。
同じ仕事を一緒にこなして来た。
でも。
あたしの方が年齢的に若いからか。
社員にならないかと言われたのは、あたしだけだった。
彼女は、いつもあたしを支えてくれて。
それは仕事も、プライベートも。
あたしがどんどん昇格して行くのも、自分の事のように喜んでくれて。
あたしの、お姉さん的な存在だった。
おかしいと思う所は、きちんと言ってくれる。
そして、いろいろ叱ってくれる。
あたしも、信用して、彼女には話して来た。
もちろん、あいつとの事も。
最初は「好きになってしまった気持ちは仕方ない・・・でも。旦那さんにだけは、絶対にばれないようにね・・・」なんていってた。
お台場にあいつと初めて行った日。
「行く事に、反対はしないけど・・・もしも、途中で帰りたくなったりして、電車とかなくなったりしたら、すぐに電話しなさいよ。迎えに行くから!!」って言ってくれたのも彼女だった。
最近、ゆっくり、彼女と話す事はなくなってた。
あたしは、自分の生活のために働かなきゃいけなくなり。
仕事も長時間が当たり前になり。
空いた時間は、あいつと会ったり、寝たりして。
あたしは、彼女とたくさん言い合いもしたけど。
でも、彼女が大好きで。
彼女みたいに、強い、芯の通った女性に憧れて。
その彼女は、あたしが話さなかったこと。
とても、悲しそうにした。
でも、あいつより誰より先に、自分に話してくれたと言う事に。
すこし、喜んでくれた。
「ちゃんと、話そう。H君に。私も付き添うから」
あたしは最初、嫌だって言った。
でも、彼女は絶対に言わなきゃならないって言った。
それは。
隠す事は、彼を傷つける事になるからだと言った。
自分も原因なのに、知らされず、あたしがただ我慢している事は。
後で知ったら、彼も傷つくからだと。
そして。
「りりかが一人で苦しむこと、きっとH君は望んでいないよね」
うん、そうだと思う。
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