朝から。
いやーーーなことが、起こった。
あたしが、仕事始めて、こんな嫌なこと、初めて。
バイトの女の子が、お客さまにお冷(最初に出す水です)を、掛けてしまった。
あたしは、遠目にチラッと見てたんだけど、その客が水を持って歩いている彼女に気づかず、急に立ち上がってぶつかったから。
しかし、その客は、怒鳴って。
責任者、呼んでこい。
と。
あたしは、慌てて出ていく。
すいません、すいません、と、その女の子と一緒に謝る。
彼女は泣きだすし・・・
客の怒りは頂点だし・・・
あたしも泣きたいよ・・・
「ねー、責任者って君なの?」
「はい」
「こんな若いお姉ちゃんが?」
「(ムカ!!!)はい」
「こんな子を責任者にしちゃうから、だめなんだよ、この店は!!」
「(ムカムカムカ・・・・)本当に申し訳ありません」
「ちゃんと、教育出来ないから、こんな事になっちゃうんだろ?」
「(あ?お前が急に立ち上がったせいだろ?)はい、申し訳ありません。もう一度、徹底して教育しますので・・・(マニュアルどおり)」
「まったくよー。こんな女が責任者だから、どうしようもねーなー」
「・・・本当に、申し訳ありませんでした。クリーニング代は・・・」
「金とかどうでもいいの。あれだな、もっと上の、本社の人間とか呼んでよ」
「あの・・・しばらくお待ちいただくようになるかと思いますが?」
「じゃー、電話させて。(紙に携帯番号を書いて)これに。君じゃだめだ。女に話しても、仕方ないや」
「・・・・・・・・・・・・・・。かしこまりました」
もー、その客帰ったあと、あたしは半泣きで本社に電話して。
部長に伝えた後。
あいつに電話してしまった。
しかも、大泣きで。
あいつが出る前から泣いてたあたし。
いきなり、「もしもし」より先に、「ちょっとー!!!」って、泣きながら言われたら、あいつも驚くに決まってる。しかも、あいつは寝起き。
「どうした??何?何があった???」
今さっき起こった事を、あたしは泣きながら伝える。
あいつも、一緒になって怒ったりして。
「もう、嫌だ。こんな風に言われて・・・」とか、あたしがぐずぐずしてたら。
「分かった分かった。泣かないの。ね」
と、慰められて。
あたしは、朝両替の時間だったから、電話を切って仕事に戻った。
ちょっと、落ち着いた。
でもまだ、かなり凹んでた。
銀行に行く時間になって、外に出たら。
あいつがいた。
びっくりした。
「どうしたの?学校は?」
「今日は二限から。りりかさんに、元気を補充しに来たよ。銀行まで、乗せて行ってあげるよ。乗って乗って」
なんだか、その気持ちとか言葉が、ものすごく嬉しくて。
あたしは、また泣いてしまった。
車の中でも、あいつはずっと、「泣かないのー」を連発してた。
銀行までの往復20分ちょっと。
いっぱい、元気をもらった。
今日、あいつは学校終わったら、すぐにバイト。
しかも、明け方の五時まで。
だから、寝ていられる時間に、寝ていたい筈なのに。
あたしに起こされて、そして、そのまんま、会いに来てくれた。
今更ながら。
すっげー、優しい。
と、あたしは思った。
あたしをおろして、真っ直ぐ学校へ行った。
そして、メール。
「ありがとう、すごく、嬉しかったよ・・・でも、寝なきゃ、なのにごめんね・・・」
「何言ってるんだよー。りりかさんが辛いときに、寝ててどうする?一緒に半分こにしようよ。半分、俺がもらうから、無くなった半分にいっぱい楽しい事詰め込んで!」
笑顔のマークがたくさん並んでた。
あたしは、すごく、すごーく。
幸せな気持ちになれて。
こんな、ちょっとの言葉や態度で。
人の心は、不思議だなぁ。
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