今度の金曜、職場の送別会がある。
もちろん、職場の、だから、あいつは出席なんか出来ない。
その事を、凄く凄く心配している。
あたしが「大丈夫だってー」と言っても、「りりかさんは、弱いくせに飲んで、酔って、隙が出来て、記憶なくすからなぁ・・・」と言われる。
そんな、上司の前でなくしません(笑)
言い合ってた。
行くなとは言わないけど、酔わないで、迎えに行かせて。
分かった、酔わない。迎えに来てもらう。
何がいやって・・・
あいつの嫌いなマネージャーが来るから。(過去日記6/14参照)
あの時、行かないって約束はしたけど、今回のは仲間内、とかじゃなく、職場の、だから、行かないとも言えないあたし。
それを、あいつは分かっている。
だから、いくなって事は言わない。
あいつとマネージャーがなんでそんなに仲が悪いのか、あたしはよく知らなかった。
仕事中、喧嘩になったとか、言い合いになったとか、そう言う話をちょっと聞いただけ。
「なんで嫌いなの?」
「合わないの!」
だけしか、答えてくれない。
「りりかさんを迎えに行ったときに、酔わなかったら、いい物あげるー」
「何々??」
「それはお楽しみだよ」
「そう、ならいいけど、それでも」
「もっと突っ込んでよー・・・今知りたいのぉ♪とか言ってよ・・・」
「言わない。酔わない自信あるから、そのいい物はあたしの物になるのは確実だから」
「でも、本当は今知りたいんでしょ?ね、知りたいんでしょ?」
「・・・君が言いたいだけじゃん?」
「あたりー」
「・・・。」
あいつが「目を閉じて」と言う。
あたしは言われた通りにする。
手のひらに何かおかれる。
「目を開けていい?」
「待って。開ける前に、何だと思う?」
「んー・・・」
あたしは両手でちょっと触っただけで、分かった。
「カギ・・・?」
「お、すげー!って、すぐ分かるか」
あたしは、目を開けて、手のひらを見た。
カギ。
キティちゃんのキーホルダー付けてあって。
「うちのカギ。俺がいなくても、入れるように」
あたしは黙ったまま。
カギを見つめて。
そして、ゆっくり言った。
「もらえない」
あいつが、笑顔から真顔になった事に、あたしの胸がものすごく痛んだ。
あたしは、もう一度言う。
「ごめん、もらえないよ」
カギを、テーブルの上におく。
「なんで?」
あいつが、不思議そうに聞く。
なんで・・・って。
「こう言うの、今はまだ、無理。あたしが、君の合いカギ持ってるなんて、おかしいでしょ?」
「おかしい?」
「うん、おかしい。なんか、あたしはそう言うの、まだ出来ないや」
嬉しかったのは、確か。
カギなんてくれたのは、本当に嬉しい。
でもね。
あたしが、君の部屋のカギをもらったりする事は、おかしいと思う。
だから、今はまだ、もらえない。
逆に。
あたしの部屋のカギをくれって言われても、それはもちろん無理。
変なとこに、こだわってしまう。
ごめん。
「なーんだ、俺一人の空回りかぁ」
あいつは、笑顔になって言った。
無理矢理、作ってる、笑顔。
家に帰って、あいつからメール。
「本当に、カギを渡すこと、俺なりにいろいろ葛藤した結果なんですよ。他人にカギを渡した事なんか、今まで一度もなかったから。でも、りりかさんには持っていて欲しいって思ったんです。重たく感じちゃった?ごめんね。」
ごめんね。
は、あたしが言う言葉だよ。
あいつが、一人でカギ作りに行って、キーホルダーを選んで。
そんな光景を想像したら、凄く切なくなった。
素直にもらっておけばよかったのかもしれない。
そう思ったりもした。
でも。
あたしは、なんだかそう言うのが嫌だった。
同棲とか、半同棲とか。
そういう形になっちゃうのがいやだった。
カギなんか渡したり、受取ったりしたら。
知らない間に来られてたり。
うち掃除しといて、なんていわれたり。
そんなことないかもしれないけど、絶対ないとも言い切れないし。
そして、そのまんま。
ずるずる、「もう二つ部屋借りてるのも、経済的にもったいないから、一緒に住んじゃおう」とかなるのが怖かった。
あたしが、勝手に想像しているだけだけど。
空回りしているのは、あたしだよ。
勝手に想像を膨らませて、君を傷つけて。
「いつか、あたしの気持ちが落ち着いて。そして、相応しい人間になったら。そしたら、あたしにカギをください。お願いします」
ああー。あたしって、不器用だなぁ・・・。
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