今日は、朝10時から夜12時まで仕事。
あいつから「朝からだるいです」というメールが来たきり、夕方まで来なかった。
心配になって、夕方の休憩で電話する。
「平気ー?」
「ああー・・・まぁまぁ」
「平気そうじゃないねぇ。あたし、仕事抜けられないし・・・終わったら様子見に行くから」
「いやいや。りりかさんも病みあがりだし、今日は仕事が長時間なんだから、帰って寝てください」
「だって、心配じゃん?」
「気持ちだけで・・・いいです」
すごく、苦しそうだったから、電話は切った。
行くつもりでいたけど、よく考えたら、あたしが行ったらゆっくり眠れないから、嫌かな、とか思ったりした。
どうしようかなぁ、って思ってた。
仕事終わって、やっぱり心配だし、様子見てすぐ帰ろうと思って、ヨーグルトとお茶とゼリーを買って行った。
寝てたら・・・と思って、チャイムは鳴らさないで入った。
そしたら。
あいつは、フローリングの上で毛布にくるまって、転がってた。
あたしはびっくりして。
「何してるのよー!!」
「あ・・・びっくりした。来てくれたんだー?水飲みに台所まで行ったら、ベットまで歩くのだるくて・・・」
あいつを抱えてベットに運ぶ。
「すいません」とか何度も言うあいつ。
もともとは、あたしが移しちゃったんだろうからねぇ。
「なんかいる?お茶?ヨーグルトもあるし」
「いえ、お茶だけください」
一気にお茶を飲み干して、「寒気がする・・・」とベットに潜り込んだ。
「あたしは、帰るね、寝てね」
「え・・・。いてくれないんですか?」
「だって、寝れないでしょ?」
「いてほしい・・・」
「わかったよ。いるから、寝て」
あいつはマスクをして、布団をあげる。
「ここに来て、一緒に寝て。マスクしてるから、移らないよ」
あたしは、言われた通りに横に寝る。
いつも、あいつがしてくれるみたいに、頭を抱え込んで、よしよしして。
背中をとんとんした。
そのうち、あいつは寝ちゃって。
マスクは息苦しそうだし、はずした。
あたしがベットから出ようとしたら、服をしっかり捕まれてて。
外そうにも外れなくて。
あたしは、諦めて、そのまま、横に寝た。
夜中に何度も苦しそうな咳をする。
あたしは、背中をさすったり、軽く叩いたりして。
「こうしてると、すげー、安心する・・・なんでだろ」
「何?起きたの?」
「うん・・・なんかね、すごーく、気持ちいい」
「そかそか、分かったから、寝なさい」
「うん・・・このまま、朝までこうしててね」
あたしは、背中をさすって、また寝かしつける。
こうして、子供たちの事も、同じようにしてきたな、と思う。
今、もしも子供たちは、風邪を引いたら、誰にこうしてもらうんだろう。
なんて、また、考えてしまう。
よそう。
もしも、とか、そう言う考え。
あたしは、あたしの人生を自分勝手に進んで行くと決めた人間なんだから。
今更、考えたって、仕方ないんだから。
あたしが手に入れた幸せの証の子供たちを。
自分から手放して。
今、こうしてあいつを抱きしめてる。
この、幸せだけは、手放したらいけないんだよ。
ぼんやりと、あたしは明るくなってくる空を見る。
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