仕事は17時で終わった。
本当は明日から熱海に行くはずだった。
子供たちは今日からあたしの実家に泊まる筈だった。
あたしは熱海に行かなくなった、と言っても、子供たちは実家に行きたがり、母が迎えに来てくれた。
あたしは家で一人、ぐったりしてた。
食べないで、もう何日たったんだろう。
そんな事考えてた。
そのまま、あたしはソファーで寝てしまった。
寝ているとき、遠くでサイレンがなってた。救急車の。
目がさめて、気づいたらベットの上だった。
横に、だんな様が座っていた。
「帰ってきたの?」
あたしが言った。
起き上がろうとしたら、頭痛がした。
それに、手に何か引っかかってた。
点滴の管だった。
あたしは、訳が分からず。
見回すと、家じゃないことにやっと気づいた。
「なに?ここ病院?」
あたしはだんな様に聞いた。
あたしは、子供たちを送り出して、そのまま寝てしまった。
そして、帰ってきただんな様が揺り起こしても起きない。
顔色は真っ青。
息はしているけど、全く意識がない状態だったらしい。
たまに目を開けるけど、何を見ているか分からない焦点で、また目を閉じ、だんな様は普通じゃないと思い、救急車を呼んだらしい。
そか、あのサイレンの音は、あたしが乗っている救急車の音だったのか。
真夜中だった。
栄養失調で、もうやばかったらしい。
よく、こんな体で仕事なんか行ってましたね、と医者に言われる。
「ごめんね、いろいろと」
あたしはだんな様に謝った。
だんな様はちょっと笑顔で、「いいよ」って言った。
だんな様がお茶を買って来てくれた。
「お前が起きなきゃ、保険証の場所も分からなくてさ」
笑いながら、言う。
そして、あたしの頭をなでる。
こんな事されたのは、どれくらいぶりだろう。
と、あたしは思う。
不謹慎だけど。
あいつがよしよししてくれている感覚になってしまう。
あたしは、そのままうとうとして。
なんだか、安心して・・・
はっとして目がさめた。
「明日、また来るよ」
もう明け方だった。
1時間以上寝たみたいだった。
帰り際、まただんな様があたしの頭をなでた。
そして、小さい声で。
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