悩んだまま、帰宅して。(昨日の続きです)
あたしは、あたしと別れた方が、きっとあいつもいいに決まっていると思う方向に考え始めていた。
あいつからメールが来て。
「俺の気持ちは言ったとおりです。りりかさん、考えるのもいい事だけど、俺の気持ちも少しは尊重して」
まったく、やらない関係になるのが、あたしは一番あたしが楽だと思っている。
でも、それじゃ、あいつがかわいそう。
いつ出来るか分からない挑戦を続けるのも、あたしが辛い。
だったら。
あたしじゃない人と付き合うのが一番手っ取り早いんじゃないの?
そんな考えに達してて。
その考えはあいつの意見は尊重されてないかって言ったら、そうでもないと思い込んで。
だって、嫌がらない相手を選べるんだし。
だって、あたしじゃなきゃ、出来るんだし
・・・こればっかり。考えて。
深夜だと言うのに、パソコンの周りを掃除してた。
そしたら、今の仕事を始めたばかりのころの日記を見つけた。
大学ノートに、だらだら書いてた日記。
25歳のあたしが、書いてた日記。
1年くらい書き続けてあった。
暇つぶしに、なんとなく読んでた。
仕事が出来なくて、悩んでいる事ばかりが最初は書いてあった。
そのうち、新しくオープンした、今の店に移動になる。
そして、仕事を任され始める。
仕事と家事の両立の難しさに悩んでいる事も書いてあった。
「どっちか、ほったらかしちゃえば、いいのにね」
なんて、書いてあって。
あたしが、今の店に来る前に働いてたところにいた人の話が出始めた。
彼は、あたしより2つ下だった。
当時23歳。今のあいつと一緒だね。
あいつと同じで留年してて。彼の場合はどうしてもやりたい仕事に就職できなくて、そのまま大学に残ったんだけど。決して、誰かさんみたいに、単位が足りなくて、じゃないんだけど!
彼(Sさん)は、仕事の上で、大先輩だった。
あたしは、仕事が出来るのに鼻に掛けず、一生懸命なSさんを尊敬してた。
いろいろな事を教えてもらった。
あたしは、なんとなく好意を持ってた。
でも、あたしは主婦だし、そんなことを出さないように、出さないように接してた。
でも、あたしが移籍することになって、その送別会から、あたしたちは急激に仲良くなる。
メールのやり取りも、しょっちゅうする事になる。
同じ銀行を使っているから、行く時間を合わせて、数十分の会話を楽しむ。
Sさんが言う。
「秘密のデートだね」
あたしの気持ちが、Sさんに向いて行くのが、日記を見てて、手に取るように分かる。
Sさんも、同じだったんだと思う。
ある日の日記に。
「好き。」って言うメールが来た。あたしは、あたしに言われているって分かってたけど、怖くて。「あたしも飲み会とか好きだよ」と、訳の分からない答えをしてごまかした。
というのがあった。
そのうち、あたしはSさんの気持ちが怖くなる。
重くなる。
あたしの誕生日に携帯のストラップをもらう。
「俺もお揃いにしたんですよ」
あたしは、つけなかった。
つけられなかった。
あたしみたいなの、好きなってどうするの?
あたしは、主婦なんだし。
Sさんのためだよ、辞めた方がいいよ。
そう思って、あたしは、メールをしなくなった。
銀行でも時間をずらすようになった。
「避けてる?」
こんなメール来ても、返さなかった。
きっと、忘れるよ、すぐ。
傷が浅いうちに、あたしなんか、忘れてね・・・
そして、最後の日記に。
「あたしは、苦しい。苦しくて、苦しくて。でも、苦しい事ばかり考えているあたしが、あたしじゃないみたいで。あたしさえ、我慢すれば、うまく行くんだから。あたしは、あたしのために。Sさんのために。こんな気持ちは捨てよう」
そこで、日記は止まってた。
あたしが思った事。
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