一日メールをしないまま、深夜勤務のために仕事に向かった。 今日は、あいつとあたしは引継ぎで会うので、ちょっと気まずいなとは思ったんだけど。 わざとらしく明るく「おはようございます」とか声掛けてきて、明らかにご機嫌を伺っているのが分かる。
あたしも、心の中ではもう許していた。 別にたいしたことじゃない、酔ってての上だったし。 けど、素直に「いいよ、もう」とか言えないあたし。 そのまま、無言で仕事に入って行った。
あいつは、あたしが休憩になるまで、ずっと待ってた。 それで、休憩に入ったあたしに、「本当にごめんなさい、気持ちを思いやって無かったですよね。働いているんだから、来れないのは当たり前なのに、本当にすいません、失言でした!!!」て、謝ってきた。
あたしは、素直にまたまたなれなくて。 「なんかさ、ああいうこと言われて疲れたよ。でも、あたしは結婚しているからって言う負い目からかな、普段からいろいろ我慢したりしちゃっている。付き合ってて疲れるくらいに我慢してストレスためちゃったりしてる」 かわいくないこと、言っちゃった。 そのまま、あたしは逃げるように仕事に戻った。 あいつは、ずっと考え込んでて、そして、仕事しているあたしに言った。
「こんど、我慢させるようななんかあったら、そのときは言ってください。別れますから」 あたしは目が点になったと同時に、凄く胸が苦しくなった。 息が出来ないんじゃないかと思うくらいに。 「簡単に・・・言うんだね。別れるなんて言葉を」 もう、目も合わせたくなくて。あたしはショックでショックで。あたしたちの関係は、本当に壊れやすい、もろいものだから、そんな言葉を口出して欲しくなかった。あたしは泣きたいのを我慢して仕事に没頭してた。あいつはしばらく、そんなあたしを見ていたけど、口も利かないままあいつは帰って行った。
一部始終を見てた、いっしょに深夜勤務をしている仲間に言われた。 その人は、もうあたしが入ったころから一緒で、仲良しの32歳バツイチの男だ。
「お前、判ってないな。女は別れるって男が言うと、そんなに軽く言うなよって思うみたいだけど、男が言うときは、すごい切羽詰って、本当に勝負に出たってことなんだぞ。」 「でも、そんな風に言うこと無いじゃん。軽いよ、やっぱり」 「ばか?お前があいつにあんな言葉を言うほどまでに追い詰めたんだぞ!!!」 この人とは、喧嘩とか言いあいとか、いろいろしたけど、こんな風に一方的に怒鳴られた事は無かった。 すぐに、いつもみたいに、大人の雰囲気に戻った彼は、 「お前、疲れるだの、我慢してるだの、そんなこと言われたらさ、ショックじゃない?凄く好きなやつに。あいつの失言ばかり責めるけど、お前の発言は、俺から見れば失言だらけだよ?あいつは許しているみたいだけど。考えて見たら?」
確かに・・・と思った。あたしは、自分のことばっかりで、素直にならないで、こんな風に知らない間に彼を傷つけて。 あたしを好きだと言う気持ちが、目に見えて、手に取るように分かるから、 調子に乗っていたのかもしれない。 それとは裏腹に、自分が結婚していると言う負い目から、いつあいつを疲れ、呆れさせるか分からない、そんなとき、あたしが振られたとき、 あたしは別に平気だもん、と言うのを装いたくて、いつも強気に出て、 あんたがあたしを好きだからあたしはつきあってやっていると言う 変な態度に出ていたかもしれない。 すごく、謝りたいと、思った。
休憩をもらって、すぐにメールした。 「ごめんね、あたし、なんか、今凄く、悪いと反省してるよ」
でも、こんな状況でもあいつは、あたしだけの事を考えてて。 「悪いのは俺ですよ。謝らなくても、考えなくてもいいから、まだ後数時間仕事が残っているんだから、がんばってください。あなたは、他のこと考えながら仕事が出来るほど器用じゃないんだから。仕事終わって、元気があったら会いに来てくれませんか?」
また、涙が出そうだった。あいつの中で、あたしは、きっと、何物にもかえられないほど、大きなものなんだろう。 それは、あたしの思い上がりなんかじゃなくて、本当にそう思う。 本当に、そう思った。
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