不思議な、不思議な、一日だった。 単なるバイトの大学生と、単なるパートの主婦が、クリスマスシーズンのこの時期にお台場の観覧車に乗りに行く。 しかも、主婦より大学生は5歳も下だ。 このシチュエーション、どうみたって、若い燕をはべらかせている、悪い主婦だろう。
ことの始まりは、あいつが、あたしに「ボーリングで俺が一番だったら観覧車に一緒に乗りに行ってくれませんか?」と言うものだった。 あたしもあたしで、単なる賭けって事で、軽くOKしたのが、運命なのかも知れない。
やつは、自分から言い出すだけあって、1番になった。笑顔で、「観覧車、お願いしますね」と言って来た。 簡単にOKするんじゃ無かったかな、まぁ、バイト仲間と一緒に遊びに来た感覚でいいのかな、なんて、考えながら、観覧車に乗り込んだ。
観覧車の中で、あいつはクリスマスプレゼントですと、包みを渡してきた。お礼を言ってあけると、中身はダイヤのネックレス。 「もらえるわけないじゃん、まずいよ」 「返されても、どうしろって言うんですか?」そりゃ、そうだ。 とにかく、この重い空気から抜け出したい一身で、再度お礼を言って閉まった。
観覧車に乗った後は、パレットタウンの中をあるいて、食事して、帰って来た。あたしは、帰りの車の中でも、ずっと構えているような、堅くなっているような、とにかく、会話をあまり出来なかった。 いったい自分は何をしているんだろう。だんなと子供がいる自分が、5つもしたの大学生と観覧車?もう30も近いおばさんの癖に。からかわれているのかしら?それとも、この子、たんじゅんに観覧車に乗りたかったのかしら?最終的には、「来るんじゃなかったな」そんな事を延々と考えながら、岐路についた。
帰宅後、あいつから携帯にメール。「凄く楽しかったです。なんか、夢みたいな一日でした。前よりも、ずっとずっと、あなたが好きになりました。」 呆然とした。
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