メビウスに囚われた哀れな男となって彼は延々と語り続けた。その空想上の不遇、守護者設定の不具合について、ひたすら語ってくれた。祖国をごっそり奪われた難民のようだった。僕は彼のことを全く理解できなかったが、彼が求めているものの根源は僕とも共通していた。そんな女はこの世に存在しない、というシンプルな事実を認めれば、もう「彼」や「僕」は存在していけないのだと本能的に知っているからだ。「その他大勢」に回帰してしまうのだ。 一定期間を経て、「呼んでも呼んでもひどいものしか現れない」哀れな末路は、実は終結しない。彼の辿る道はメビウス状となっていて出発点へいつの間にか立ち戻っている。体力は回復し、魔力がまた宿って、素早さや体力は万全で、あれだけのいろいろな日々があったにも関わらず、経験値はゼロに戻っていて、全ての教訓は無かったことにされる。だから僕は傍から客観的に見ているのだ。少なくとも僕は彼と同じ間違いを犯さない。 「なあ、おれは間違っているのか?」「いいや、君はそれでいいんだ」「だろう!?」「ああ」 なんてひどいことだ。しかし、仕方がない。 君に守護者を完成させることは出来ないんだ、けれど僕はそれを成し遂げる、なんていう邪念が僕を強く支配している。 |
writer*マー | |
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