ごく短い5日間という時間の枠の中には、様々な現象や事態がありました。どうすればいいのか考えあぐねたり、手探りで動いてみたり、考えをうち棄ててぼんやりしたり、ちょっとした指摘によってパッと展望が開けたりしました。 それらは濃密な体験だったはずですが、圧縮され、ただ吹き飛ぶように通過してゆきました。 呆然と立ち尽くすばかりです。 週末で休みに入るのでそれは嬉しいのです。 しかしあまりに速く、虚しいまでに、痕跡も残さずに通過を決め込む日常の姿に、呆然としています。 高速で撃ちつけて煌めくがままに流れて去ってゆく音楽のように。 成長する前に色んなものがただみしみしとひしめきあって通過を決め込んでゆくようで、少し怖いのです。そして、その日々を糧とするだけの構えも取れぬまま、無我で踊ってばかり、ひとつ、ふたつ前の曲は何だったのか、思い出せないままその場をこなすだけとなってしまっているのが少し哀しいのです。 時に哀しく。時は高速。 集中力が上がれば上がるほど、その場に拘泥し格闘すればするほど。意識は点として凝集され、流れと広がりを持った俯瞰の視点は失われます。そしてひとつひとつ、流れて去ってゆく煌びやかな曲の記憶は失われ、気がつけば膨大な曲数を通過したという事実だけが残るのです。clubで果てしなく音楽と交わり、戦ったときのことを思い出します。似たようなことが日常の生活で起きているようです。 愛おしいのか、厄介なのか。清々しいのか、苦々しいのか。 でも決して不快ではなく、忌避すべきものではないのです。それが昔との最大の違いです。がっぷりと組み合って、戦い、抗うに足るものです。 願わくばさらにいささかの狂人を、脱線者をとは思うのですが、食堂でカレーウドンにプロザックやクラウドを入れてかきこむような香ばしい狂人なんてこんな職場には勤めたりしないでしょうし。 どことなく哀しさと高速を以って、私の手を、肩を、後ろ髪を掠めて過ぎ去ってゆく日常。それに対し、妖艶な毒蛇のような悠揚さと不気味さで立ち向かう華々しい狂人の感覚域を広角に開いて。そして私をその中に取り込んで立ち尽くさせていただければ。 ああ。それは手に入らぬ美しい恋愛への妄想に似ています。狂気、狂人が真に美しく、ただ華麗で新しいだけで済むはずがないのです。 しかし私は鋭く、艶のある美しき狂気を要請します。この、まっすぐで、ひたむきに、ただただ高速なる日常に対し、自由自在に時を圧縮、あるいは停止、さらには逆回転などを仕掛けられるように。 闇に咲き乱れる猛毒の薔薇が月光を浴びて、紅と青で密かに輝きを帯びるように、この日常に、美しき狂気の領域を広げていただければ幸いなのです。そこに私は両足を佇ませ、浅瀬で静かに波を感じてはこの世の圧倒的高速の時の流れに、静謐に対抗してみたいのです。 土台無理な話でしょう。 さらばこそ私はこうして家に帰ると痛飲します。 フォアローゼスが美味しいのです。 許して下さい。 そして正しい恋や愛をも忘れてしまいそうです。私の傍らに付き添ってくれる人のことをも裏切ってしまいかねない邪悪な衝動が生まれます。私はただ静かに立ち尽くすだけで、時の河の中で、抗っていられるのでしょうか。 きっとただ立つだけでは流されてしまいます。実験を、研究をと、私は様々な手法を試さざるを得ないでしょう。そこでは、相方の優しく差し出してくれるその手を、握り返す余裕が無いように思われて仕方ありません。 そして彼女はきっと一緒には抗ったりはしないでしょう。彼女は前を向いて生きています。また別の生活を歩んでいます。歩調を乱し、止めたり陥ったりすることに心を傾けてしまうようになったら、きっと二人は一緒にはいられないでしょう。 それも承知なのです。 昔、帽子(しかも鉄板の入ってそうな)の似合うキュートな女性に「俺を、俺という機構を、破壊してくれ!!」と言ったら「自分で壊しなさい」と静かに諭されたことを思い出します。左様ですね。己が手斧で、この諾々と流れゆく時の河へ一撃、二撃と、振り下ろして食らわさなければならないのでしょう。わかっています。いいですとも。 ( ー_ー)ノ ゴルベーザ風に。 いいですとも! |
writer*マー | |
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