特に、「とん」のあたりが堪らない。初夏6月半ば頃に、出鱈目で入ってみた蕎麦屋で、盛り蕎麦を頼んだら、思いがけずたいへんに美味しかった、かのような、人を身構えさせず油断させたままで、一発ちょっくらこちらの脳に拍子を食らわすテンポの良さが秀逸である。 その直後に控える「ち」、これがまた良い。美味い蕎麦に、きりりと美味い冷酒が備わったような完全無欠なる、しかしやはり油断を許しながら、人の心を一発打つリズム感である。これは堪らない。一言、二言、自分で小声で口にする度に「とんち」「ああ」「とんち」「うおあ」「とんち」「わああ」とボルテージが徐々に高められてゆくのが分かる。音韻に秀でた才のある人種ならこの発語を繰り返している間に酔い痴れてウフフになるであろう。 平仮名で書くより、漢字の方が、含みがあって尚更良い。 「頓」である。「とんま」「とんぷく」「とんちんかん」の「頓」である。しかも言うならば「どうとんぼり」の「とん」。もうどこまで私のこころを揺さ振る積りなのかしら。嫁入り前に素性の知れぬ遊び人の男に初夏の海岸で一寸遊びに誘われて心をふうっと奪われてしまった、かのような心持ちにて候。 漢字変換すると ○「頓馬」(やること・言うことの全てが、ばかげて見えること) ○「頓服」(何回かに分けて飲むのではなく、その時、一回だけ服用すること) ○「頓珍漢」(言行が見当違いなこと・人) ●「道頓堀」(大阪・心斎橋筋にある、祝祭の度に人が飛び降りる場所) もう病み付きの様相を呈してきたところで、今宵もお別れの時間がやってまいりました。ごきげんよう。とんちき。 ○「頓痴気」(『とん』はとんまの意、『ちき』は『いんちき』『らんちき』の『ちき』と同義の接辞。『気の利かない間抜け』の意の口頭語的表現) (^−^)『ちき』の説明の部分が、さっぱりよくわかりません。 ※語義引用;『新明解国語辞典』(第5版) |
writer*マー | |
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